全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は6月27日、第78回株主総会を東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪で開催し、取締役と監査役選任の2議案をすべて可決して閉会した。
総会で議長を務めた芝田浩二社長は「旅客需要は回復しており、国際線はコロナ前の約5割、国内線は片道7000円セールなどで直前四半期は約85%まで回復した」と株主に現状を説明。一方、無配となったことについては「財務基盤の強化が喫緊の課題。当期配当は見送らせていただいたが、足もとでは業績は回復しており、配当を再開する条件は整いつつある」と、早期の復配を誓った。
国際線はインバウンド(訪日)需要が好調な反面、日本人が海外へ出掛けるアウトバウンドの回復が遅れていることから、ヒットした国内線片道7000円セールを念頭に、国際線の大胆な割引運賃や、株主向けの割引などを求める声が株主からあがった。
営業を担当するANAの矢澤潤子常務は「国際線のマーケティングが良好に推移した結果、黒字決算の原動力が国際線だった。ハワイやロサンゼルスなど利用しやすい価格設定を行っており、好調に販売実績を作っている」と現状の販売施策に理解を求めた。
また、今年3月に発表した日本貨物航空(NCA/KZ)の100%子会社化に関する株主の日本郵船(9101)との基本合意について、株主からは「NCAはコロナで一時的に利益を出したが、毎年赤字を出している会社ではないか。(買収する)メリットはどこにあるのか」との疑義が出た。
グループの経営戦略を担当するANAHDの福澤一郎副社長は「アジア-欧米間の輸送力を強化する必要があった」と応じ、NCAが持つ長距離国際線ネットワークなどが、グループの貨物事業を強化する上で必要と説明した。
会場を訪れた株主は1040人で、昨年よりも376人増加。所要時間は昨年よりも16分長い1時間48分で、質問者は昨年から3人増えて14人だった。退場者は2016年から8年連続でいなかった。
質疑応答後の議案採決では、取締役11人と監査役2人を選任する2つの議案が原案通り可決した。新任は、取締役が客室乗務員出身の梶田恵美子氏、社外監査役が三橋友紀子氏の2人。取締役選任では修正動議が出たが、原案通りの可決により、すべて否決された。
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