MRJ, エアライン, 機体, 解説・コラム — 2023年6月27日 15:23 JST

ANA、スペースジェット代替機「現有機との親和性考慮」株主総会で賠償手続き完了報告

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 全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の福澤一郎副社長は6月27日、今年2月に三菱重工業(7011)が開発を中止したジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」について、賠償などの手続きは終了していると株主総会で説明した。「事業計画への影響はない」とし、代替機材の選定については「発注当時と事業環境や市場環境も異なる。現有機材との親和性を考慮して選定を行っていく」と説明した。

ファンボロー航空ショーの会場で飛行展示の予行演習に向かうMRJ(当時、手前)=18年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 スペースジェットは、2008年3月27日に持株会社化前のANAから確定15機とオプション(仮発注)10機の最大25機を受注して事業化。2014年8月28日には、日本航空(JAL/JL、9201)からも32機すべてを確定で受注した。名称は2019年6月にMRJからスペースジェットに改め、開発中止を発表した今年2月7日時点の総受注は267機で、このうち確定受注は153機、オプションと購入権は114機だった。

 ANAHDは、4月24日に開発を担った三菱航空機との契約解除を発表。福澤氏は「スペースジェットのローンチエアラインとして、大変残念。非常に厳しい判断を下されたと理解している」と述べた上で、「計15機の契約解除の合意書を締結し、4月に適時開示した。三菱航空機との納期遅延の賠償は合意済みで、すべての手続きは終了している」と株主に説明した。

 事業計画への影響については、「受領遅延を一定度想定」(福澤氏)していたとして、影響はないとした。ANAHDは、ボンバルディア(現デ・ハビランド・カナダ)のターボプロップ機DHC-8-Q400型機(1クラス74席)を2017年度に3機導入し、その後ボーイング737-800型機(2クラス166席)をリースで4機導入するなど、数年前からスペースジェットの納入が計画通りに始まらないことを織り込んで、機材発注など経営計画を立てている。

 代替機材の選定基準として「発注当時と事業環境や市場環境も異なる」「現有機材との親和性」と、前広に選定を進めていく姿勢を示した。

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