米国の国家情報長官室(ODNI)は現地時間6月23日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的なパンデミック(感染爆発)の起源に関する調査報告書「武漢ウイルス研究所とCOVID-19パンデミックの起源との潜在的関連性」を公表した。今年3月にバイデン大統領が署名した、流行の起源に関する情報を可能な限り多く公開する米国の法律に基づき、機密解除されたもの。
報告書では、NIC(国家情報会議)やCIA(中央情報局)、FBI(連邦捜査局)など米国の各情報機関が、COVID-19の原因となるウイルス「SARS-CoV-2」が最初に人へ感染した際、ウイルスを持つ動物との自然界での接触だったか、武漢ウイルス研究所の実験室に関連したものだったかについて、すべての情報機関が濃淡はあるものの、自然由来と実験室関連由来の両方の可能性を指摘した。
NICとほかの4つの情報機関は自然由来、エネルギー省とFBIは実験室由来、CIAと別の情報機関は正確な起源を特定できないとした。
一方、ほとんどすべての情報機関が、ウイルスが遺伝子操作されたものではない、と評価。また、すべての情報機関が生物兵器として開発されたものではない、と評価した。
武漢ウイルス研究所は、中国科学院が1950年代に設立した民間研究機関。人民解放軍から独立しているが、国際獣疫事務局は同研究所の職員が公衆衛生関連の研究で、人民解放軍に関連する科学者と、バイオセーフティおよびバイオセキュリティのプロジェクトで協力したと評価している。
報告書は、「武漢ウイルス研究所はおそらく世界最大級のコウモリサンプルの保管庫を持ち、それがコロナウイルス研究と関連する公衆衛生支援を可能にしてきた」と指摘。SARS-CoV-2や、この直接の祖先といえるウイルスは保有しておらず、研究関連の事故がパンデミックを引き起こしたとする直接的な証拠もなかったという。
また、2019年秋に同研究所の研究者数人がCOVID-19と一部症状が似た病気にかかったものの、COVID-19とは診断できなかったという。報告書は「この情報は、パンデミックの起源に関するいずれの仮説についても、支持も反証もしないと引き続き評価している」とした。
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THE POTENTIAL LINKS BETWEEN THE WUHAN INSTITUTE OF VIROLOGY AND THE ORIGIN OF THE COVID-19 PANDEMIC(ODNI)
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