日本航空(JAL/JL、9201)の赤坂祐二社長は現地時間6月6日、若者向けの海外旅行商品を新たに組成する考えを示した。100%出資する中長距離LCC(低コスト航空会社)のZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)を活用するなど、JALグループとして「海外にもっと出て、リアルな体験をしてもらう」(赤坂社長)新たな旅行商品を準備する。
—記事の概要—
・若者の海外旅行離れ「コロナと別の問題」
・25年度に国際線9割回復
「マインド変わってくる」
トルコのイスタンブールで、Aviation Wireの単独取材に応じた赤坂社長は、日本人の海外旅行需要が伸び悩んでいる現状について「円安の問題だけでなく、海外旅行に対する心配が皆さんにあるのは間違いない」と分析。「円安の裏返しでインバウンド(訪日)需要が強く、(北米とアジアを結ぶ)通過需要と合わせて、アウトバウンド(日本発)需要が少ない間はしのごうという、(JALの経営状況としては)過渡期にあると思う。マインドが変わってくるので、しばらくは我慢だ」と語った。
また、若年層の海外旅行離れについては「おそらくコロナとは別の問題として起きている」として、若者向けの海外旅行商品を、観光庁とも連携して準備を進めているという。
赤坂社長は「ZIPAIRは若者向けにいいと思う」と、低価格運賃で機内インターネット接続が無料など、値ごろ感が受け入れられている同社を活用することで、若年層が購入しやすい新たな旅行商品を生み出す。若者の海外旅行需要を喚起することで、コロナ後のアウトバウンド回復にもつなげていく。
ZIPAIRは、成田-サンフランシスコ線を6月2日に開設。米西海岸路線はロサンゼルスとサンノゼと合わせて3路線に拡大し、日米の夏休み需要を取り込めたことで米国発は7月中旬ごろまで、成田発は7月中旬から8月は満席になっている。ZIPAIRの西田真吾社長は「(海外への)移動はこれでいいのではないか、という方やリピーターが増えている」と、これまで海外の航空会社などを利用していた層の乗り換えを確認しているという。
25年度に国際線9割回復
JALが5月31日に発表した4月の利用実績によると、国際線の旅客数は前年同月比2.63倍の50万8203人で、50万人を2カ月連続で突破。ロードファクター(座席利用率、L/F)は17.9ポイント上昇し74.5%だった。今年度通期の旅客需要は、国内線がコロナ前の94%程度まで回復を見込むのに対し、国際線は65%にとどまる見通し。インバウンドは中国市場の回復に遅れが出ており、日本発需要のアウトバウンドも弱含みであることが影響している。
IATAのアジア太平洋地域バイスプレジデント、フィリップ・ゴー氏も6月4日、「日本人の心理が、かなり保守的でリスクを嫌うものだと理解している。(日本人の海外渡航は)年末まで大きく回復することはないだろう」と指摘した。
JALは現在進行中の中期経営計画のローリングプラン(改訂版)で、国際線の旅客需要を最終年度の2025年度末にコロナ前の90%台へ回復を目指す。
*インタビュー詳報はこちら。
特集・JAL赤坂社長に聞くコロナ後の成長戦略(全4回)
(1)「成田はアジア-北米乗継で一番近い」
(2)旗艦機A350-1000客室「昔ほど自由に作れない」
(3)航空業界の2050年脱炭素化「全然厳しい」
(4)「あまり航空から離れてもうまくいかない」
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・【独自】JAL、国際線旗艦機を19年ぶり刷新 A350-1000、冬ダイヤ就航でCO2削減(23年1月1日)
・JAL赤坂社長「国際線は25年度も影響残る」今年度はコロナ前45%、国内線9割(22年5月7日)
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