全日本空輸(ANA/NH)を中核とするANAグループは5月23日、スマートフォン用アプリを使った決済サービス「ANA Pay(ANAペイ)」をリニューアルしたと発表した。従来のQRコード決済に加えてタッチ決済に対応し、マイルからもチャージできるよう使い勝手を大幅に見直した。1マイルを1円相当として支払いに利用できる。日常生活で少額マイルを活用できるようにしたことで、マイルの使い道として人気の特典航空券に交換できないマイルを有効活用できるようにした。
—記事の概要—
・少額マイルを普段使い
・ハワイで搭乗便のマイル利用も
・マイルによる「ANA経済圏」
少額マイルを普段使い
新しいANA Payは、ANAのマイル制度「ANAマイレージクラブ(AMC)」で貯めたマイルをANA Payにチャージできる。1マイルから交換でき、1マイル1円相当で利用できる。口座はチャージ方法がマイルとクレジットカード・現金で異なり、マイルからのチャージは「ANA Payマイル」口座に貯まり、有効期限は最後の利用またはチャージした翌月から1年間となる。
クレジットカードでのチャージは従来のJCBのほか、Visa、Master、Dinersの4ブランドに対応。Apple Payにも対応し、セブン銀行のATMから現金でチャージできるようにした。カードや現金といったマイル以外からのチャージ分は「ANA Payキャッシュ」口座に貯まり、有効期限は最後の利用またはチャージした翌月から4年としている。
店舗での決済は、NTTドコモ(9437)の非接触決済サービス「iD」が使える店舗で利用できる。また、Visaのタッチ決済にも対応する。オンラインはVisaが使える加盟店が対象となる。支払時には「マイル」と「キャッシュ」の各口座をアプリ上で選択して使用する。2口座での合算払いはできない。
ANAグループが発行するクレジットカード「ANAカード」でチャージした場合、一般カードは1000円で1マイル、ゴールドカードは同6マイル、プレミアムは11マイルが貯まる。
リニューアルしたスマホアプリはiOS版から提供を開始し、Android版は6月ごろの公開を予定。現在のQRコード/バーコードを提示して支払う「コード払い」はサービスを終了し、今秋からは今回刷新した新ANA Payでもコード払いをSmart Code加盟店で利用できるようにする。
ハワイで搭乗便のマイル利用も
ANAグループのプラットフォーム事業を担い、ANA Payを手掛けるANA X(ANAエックス)の轟木一博社長は「抜本的にリニューアルし、プラットフォーム事業の骨格となる機能が整った。いつでも、どこでも、何にでも、マイルを貯めて頂き、使っていただける環境が整った」と説明した。
初年度の事業規模は「100億円の取引を実現し、波及効果を生んでいきたい」(轟木社長)と語った。ANAグループの中期経営戦略の最終年度となる2025年度には、500-1000億円規模に成長させていきたいという。
ANA Xの金子和靖ペイメント事業推進部長は「ANA Payは3つの特徴がある。豊富なチャージ手段、タッチ払い対応で使える店舗が多い、マイルがたくさん貯まる」とアピールした。
轟木社長は「年に1回しかANAを利用しない方だと、『登録が煩わしい』とマイルを貯めない判断をされている方が一定数いらっしゃる」と現状に触れた。「羽田-那覇の1往復で1人1500マイルが貯まり、家族4人なら6000マイル。東京-ハワイの往復なら1人4000マイルだ」(轟木社長)と、マイルで支払いができれば利用者にとって無視できない金額になるとして、旅行先へ向かう便の搭乗で貯まったマイルを、現地での買い物に使うなどの利用も想定しているという。
マイルによる「ANA経済圏」
ANAグループは、AMC会員向けのスマートフォン用アプリ「ANAマイレージクラブアプリ」を2022年10月にリニューアル。グループの各種サービスを集約してマイルを日常生活で活用する「ゲートウェイ(入り口)アプリ」へ刷新し、ANAグループの非航空事業の強化を図る。
グループ持株会社のANAホールディングス(ANAHD、9202)は、2020年10月に発表した事業構造改革で、航空一本足からの脱却を目指すなど、非航空系の収入拡大を目指すビジネスモデルに向け変革を進めている。「スーパーアプリ構想」もその一環で、航空や旅行の「非日常」に加え、教育や保険、生活インフラなどの「日常生活」を「マイル」と結びつけることで、街中やインターネットで「マイルで生活ができる世界」を形成する。
今年2月にANAHDが発表した2023-2025年度中期経営戦略では、マイルによる「ANA経済圏」は2025年度に年間400億円の増収効果を生み、約2000億円規模の経済圏構築を目標としている。
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