デルタ航空(DAL/DL)は、米国の航空会社に割り当てられている羽田空港の発着枠について、3年間に限り米国内のどこからでも羽田へ乗り入れられる制度「羽田ゲートウェイフレキシビリティ」を米国運輸省(DOT)に提案した。2019年に羽田の昼間帯増便枠が各社に配分されたものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で旅客需要の戻りにばらつきがあることから、羽田路線に柔軟性を持たせることを提唱している。
—記事の概要—
・米国-東京の回復率49%
・羽田7路線、ラウンジも展開
米国-東京の回復率49%
DOTにデルタは現地時間5月1日付で提案。2019年に米国の航空会社に配分された羽田発着枠は、デルタが最も多い1日5枠(5往復)、ユナイテッド航空(UAL/UA)が4枠、アメリカン航空(AAL/AA)が2枠、ハワイアン航空(HAL/HA)が1枠で、今回の提案は各社最大2枠までを米国内のどこからでも羽田に就航できるようにするもの。3年間限定で、継続的な監督官庁の監視と、必要に応じて3年間の試用期間終了後にDOTが管理する再審査を行う枠組みを提案している。
発着枠が配分された2019年当時の状況について、デルタは「世界経済の状況が安定しており、米国-アジアおよび米国-東京間の旅行需要が健全で、需要動向を合理的に予測可能な時期だった」と説明。「回復のペースは鈍く、先行きの需要は依然として不透明だ。アジア全般、特に東京へのビジネス渡航は、2019年の水準や今日(こんにち)の他の国際市場に引き続き遅れをとっている」と、羽田路線の維持に不可欠なビジネス需要の回復遅れが続いていることを指摘した。
デルタによると、今年3月までの過去1年間の米国-東京間の旅客数は、2019年の半分以下となる49%の回復にとどまった。米国からの長距離国際線上位20都市の平均回復率は72%で、20都市のうち東京の回復率が最下位だった。
羽田7路線、ラウンジも展開
現在デルタは、アトランタ、デトロイト、ロサンゼルス、ミネアポリス、ポートランド、シアトル、ホノルルの7都市から羽田へ直行便を運航できる発着枠を配分されている。同社によると、7都市すべての旅客需要が2019年比で65%を下回っているという。
今年第1四半期(1-3月期)の時点で直行便を再開している4路線の回復率は、アトランタが2019年比64%、ロサンゼルスが61%、シアトルが59%、デトロイトが58%で、直行便を再開していない3路線はミネアポリス(3月25日再開)が46%、ポートランドが42%、ホノルルが18%となっている。
デルタは羽田にマイレージ会員向けラウンジ「デルタ スカイクラブ」を2022年7月29日にオープン。米国以外では唯一のスカイクラブであるとともに、羽田では唯一の米系航空会社のラウンジとなった。当初は2020年夏の開業を予定していたが新型コロナの影響で延期していた。
デルタによると、長年契約している法人顧客の1社は、今年の出張予算を50%削減したことを同社に伝えるなど、厳しい状況が続いているという。羽田への先行投資がかさんだ上、現状のままでは旅客需要を取り込めないと判断したようだ。
また、デルタは羽田について「オープンスカイ(航空自由化)加盟国の中で唯一、協定の条件下で真にオープンではない空港」と批判。「発着枠とゲートウェイの制限は、米国の航空会社にとって二重の手錠のようなもの」と、出発地の制限撤廃を求めた。
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