エアライン, ボーイング, 機体 — 2023年4月24日 07:55 JST

JAL787就航10周年、前人未到の胴体一体成形 川重とマイル会員イベント

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 日本航空(JAL/JL、9201)は、マイルで参加できる格納庫見学「JAL工場見学SKY MUSEUM」で、ボーイング787型機の就航10周年を記念した特別企画イベントを川崎重工業(7012)と開催した。

羽田空港の格納庫でJALの787を見学するイベント参加者=23年3月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
マイアミまで無着陸
誰もやったことがない複合材一体成形

マイアミまで無着陸

 JALは2004年12月22日に、当時7E7だった787を確定30機、オプション20機発注する方針が決まったと発表。1路線目は成田-ボストン線となり、2012年4月22日に就航した。787は標準型の787-8、長胴型の787-9、超長胴型の787-10の3機種があり、JALは787-8を29機と787-9を22機の計51機を導入している。787-8のうち4機は2019年10月27日に就航した国内線機材(E21仕様)で、ほかはすべて国際線機材だ。

羽田空港の格納庫に駐機されたJALの787-8 JA837J=23年3月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で開かれた787就航10周年イベントのトークショーで787の特徴を語るJAL副操縦士の木村祐貴さん(右)と中島孝浩さん=23年3月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 川重は2005年から787の開発・量産プロジェクトに参画。前部胴体と主脚格納部、主翼固定後縁の製造を担当しており、2014年には世界最大級のオートクレーブ(複合材硬化炉)を導入した。

 今回のイベントは3月24日に開催。787の副操縦士の木村祐貴さんと中島孝浩さん、川重で787の前部胴体構造・システム設計を担当する馬場雄策さんと水素航空機/将来機プロジェクトの近藤義貴さんの4人によるトークセッション、格納庫での機体見学、機内食体験などが行われた。JALのマイル会員制度「JALマイレージバンク(JMB)」会員が対象で、必要マイルは1人4000マイルだった。

 トークセッションで、木村さんは「国際線で787が現在飛んでいないのは、天津線とグアム線、コナ線のみ。後は全部入っていますので、毎回行くところが久しぶりで、毎回勉強する量がすごいです」と、しばらく行かない就航地は規定や法律が改正されていることもあるといい、フライトの準備では覚えることが多いという。

 木村さんと中島さんは、787に乗務する前は737に乗っていた。「戦闘機と同じように外を見ながら操縦できるヘッドアップディスプレーなど、とても操縦しやすいので737には戻れないな、とちょっと思ってしまいます」(木村さん)と比較した感想を話していた。

 また、JALの国際線のほとんどの路線に投入されていることから、「クルーで行く食事の際、ガイドブックに載っていないお店を知っている先輩が多く、おいしいものを食べられるのも醍醐味(だいごみ)のひとつだと思います」(中島さん)と、目的地に到着後の食事も楽しみだという。

 先のWBCでは、日本選手団をマイアミまでJALの787が送り届けた。「僕らは残念ながら外れたのですが、マイアミまで無着陸で飛べます」(木村さん)と、787の特徴の一つである航続距離の長さを挙げたほか、「機体が軽いので一気に高度を上げられます」と軽量化により燃費改善だけでなく、揺れの少ない高度まで到達するのが早い点を指摘していた。

羽田空港で開かれたJALの787就航10周年イベントのトークショーで787の特徴を語る川崎重工の馬場雄策さん=23年3月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で開かれたJALの787就航10周年イベントのトークショーで787の特徴を語る川崎重工の近藤義貴さん(右)=23年3月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

誰もやったことがない複合材一体成形

 パイロットの2人は787の客室与圧や湿度が高いことにより、快適性が高まったことを指摘。馬場さんは炭素繊維複合材でできた胴体は、穴開けなどの加工や製造が難しい点を説明した。「炭素繊維複合材料を一体成形しているので、実は世界で誰もやったことがなく、ボーイングさんと一緒になり、本当にゼロからと言っても過言ではなかったです」と振り返った。

川重の名古屋第一工場に設置されたオートクレーブ=15年3月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

川重の名古屋第一工場で製造される787の前部胴体=15年3月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 現在は水素航空機などに携わる近藤さんは、「2009年から787-9の開発でボーイングに行っており、ボーイングの皆さんと一緒に初飛行を見ることができました」と、2009年12月15日の初飛行を目にすることができたという。「ベースラインの787-8を作ったら終わりではなく、-9、-10と開発が目白押しでした」と振り返った。

 イベントを終えて馬場さんは「(パイロットは)遠い存在でしたが、加湿のお話でやはり良かったんだな、と感じました。すごく自分としても励みになりますし、お客様がどういうところに着目しているのを知ることができて、非常に良かったです」と話していた。パイロットの2人も、複合材などに対する理解が深まったことを喜んでいた。

 スカイミュージアム側で今回の企画と進行役を担当した客室乗務員の西牟田智美さんは、コロナで他業種とのイベントがなかなか開催できなかったという。「私も機体については知らないことが多く、作っている方の顔を見ることで愛着がわきました」と話していた。

羽田空港で開かれたJALの787就航10周年イベントに登壇した(左から)川崎重工の近藤さん、馬場さん、JALの中島さん、木村さん、西牟田さん=23年3月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で開かれたJALの787就航10周年イベント=23年3月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の格納庫でJALの787を見学するイベント参加者=23年3月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の格納庫に駐機されたJALの787-8 JA837JのエンジンGEnx-1B=23年3月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の格納庫に駐機されたJALの787-8 JA837J=23年3月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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