三菱重工業(7011)の泉澤清次社長は4月5日、今年度(23年度)の目標である事業利益率7%を達成できる見通しだと述べた。コロナからの回復や既存事業の事業規模が拡大していることから、最終年度を迎えた「2021事業計画(21事計)」の数値目標は堅調に推移しているとし、今後策定する次期計画では「事業利益率は7%以上、4兆円規模の売上収益を伸ばすことで事業規模と次への投資にこだわりたい」との方向性を示した。
事業領域のうち、航空分野では航空エンジンが好調。2022年度にコロナ前の水準を超える見通し。傘下の三菱重工航空エンジン(MHIAEL)が愛知県小牧市にある航空エンジン整備工場を3月に拡張し、2020年に新設した長崎工場と合わせて、旺盛なエンジンのMRO(整備・修理・分解点検)需要を取り込んでいく。
民間機向けのエンジン整備台数は、現在の月産5基を2026年までに2倍、将来的には3倍へ増産する計画を進めている。
一方で、ボーイング787型機を中核とするTier1(1次請け)事業は、ボーイング側の製造工程で起きた不具合などの影響で「もう少しかかる。今年度後半までは今の微増くらいではないか」(泉澤社長)と見通しを述べ、固定費の適正化を継続する。
自衛隊向けのミサイル開発や量産、無人機や無人車両、新型護衛艦の連続建造、次期戦闘機の日英伊3カ国共同開発など、国の防衛力強化に伴い、防衛分野も堅調な伸びが期待される。
宇宙分野では、H3ロケットの試験機1号機が3月7日に打ち上げ失敗。泉澤社長は「大変残念だし、特に朝早くから射場で応援してくれていた子供たちには大変申し訳ない。打ち上がった時の歓声と、その後の落胆を見ると本当に心が痛む」と心境を語り、「H2が49回連続成功、成功確率98%という実績があるので、この失敗を生かして次に進んでいく」とした。
「色々とご批判があるのは承知しており、私たち経営陣への叱咤激励は大いにお願いしたいと思うが、エンジニアにはぜひがんばれと、エールをマスコミの皆さんにも送っていただけるとありがたい。ここしばらくは一丸となって、がんばって乗り越えていかなければいけないところかなと思う」と述べた。
また、成長領域としては、火力発電所の脱炭素化など「エナジートランジション」を推進。カーボンニュートラルや社会インフラのスマート化による省エネや省人化などにつながる事業を強化していく。
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三菱重工業
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