ANA Digital Gate(ANAデジタルゲート)と全日空商事、ANA FESTA(ANAフェスタ)、日立製作所(6501)の4社は3月29日、羽田空港などで展開する空港売店「ANA FESTA」で来店時にマイルが貯まる共同実証実験「顔認証スタンプラリー」 を始めた。これまでは旅行を終えて土産物を買う際に同店を利用してもらうケースが多かったが、来店頻度を高めて出発時に利用してもらったり、広告媒体としての価値を検証していく。実験は9月30日までの半年間を予定している。
—記事の概要—
・半年で最大900マイル
・顔情報保存しないPBI
・往路の集客強化
半年で最大900マイル
利用者はあらかじめ全日本空輸(ANA/NH)のマイル会員制度「ANAマイレージクラブ(AMC)」の会員番号と自分の顔写真を登録。対象となる羽田など11空港20店舗に設置されたiPadで顔認証を行うと、期間内に最大900マイルが付与される。初回登録が50マイル、来店時の顔認証1回ごとに30マイル、初回と2回目、4回目、10回目にボーナスマイルを付与する仕組みで、同じ日に同じ店舗では1回のみマイルを獲得できる。
ANAデジタルゲートと日立は、2022年に北海道のゴルフ場で指静脈認証を使い、受付業務を簡素化する実証実験を実施。今回は生体認証を活用したマーケティング活動などを目的に、顔認証を使って実験する。マイル付与による集客効果のほか、商品の認知向上につながったかなど、広告媒体としての価値も検証していく。
ANAデジタルゲートの久保田真平取締役は「指静脈認証と顔認証はメリットとデメリットがあるので、並行して実証実験を検討してきた」と語る。実用化の時期については「ユーザーの利用動向を分析して考えていきたい」という。
顔情報保存しないPBI
今回の実験では、顔認証時に日立の特許技術「PBI(Public Biometric Infrastructure)」を活用。取得した顔情報を端末などに保存せず、復元不可能な形に暗号化することで、安全・安心な顔認証をサービスの利用者と提供者双方に提供する。
PBIは顔認証以外にもさまざまな生体認証と組み合わせることができ、今回はパナソニック コネクトが開発した顔認証技術と組み合わせた初のシステムになる。
日立製作所の金融ビジネスユニット 金融デジタルイノベーション本部の真弓武行ビジネスプロデューサーによると、海外ではプライバシーに対して関心が高い欧州から、PBIに対する問い合わせがきているといい、国内外の空港などへの展開を進めたいという。
往路の集客強化
全日空商事のリテール戦略推進室の武井実チームリーダーは「これまでは旅行帰りにANA FESTAでお土産物を買って頂くことが多かったが、往路も利用していただける仕組み作りが必要」と、今回の取り組みに至った経緯を説明した。
「空港民営化により、市中の魅力ある店舗が空港内に進出し、ANAの冠だけで好立地に出店できるとは限らない状況になってきた」と危機感を示す。従来は良い商品をそろえることが集客につながっていたが、より能動的なアプローチが求められていることが、今回の実験につながったという。
羽田の場合、羽田B1フロアギフト店(無人店舗「ANA FESTA GO」)、羽田到着ロビーギフトショップ、羽田53番ゲートギフト店、羽田61番ゲート店、羽田65番ゲート店の5店舗が対象。羽田のほか新千歳と仙台、広島、松山、山口宇部、福岡、長崎、鹿児島、那覇、石垣の計11空港で実施する。
関連リンク
ANA FESTA 顔認証スタンプラリー(ANA)
PBI(日立製作所)
ANA Digital Gate
全日空商事
ANA FESTA
日立製作所
無人店舗「ANA FESTA GO」
・ANA、羽田空港に無人店舗「ANA FESTA GO」 セルフレジでマイル付与(21年8月26日)
ANAと日立
・ANAと日立、運航ダイヤ修正自動化へ イレギュラー対応の職人芸、システムで(20年3月5日)