エアバス, ボーイング, 企業, 機体 — 2023年3月8日 07:32 JST

三菱重工、航空エンジン整備工場を拡充 A320向けなどMRO強化

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 三菱重工業(7011)傘下の三菱重工航空エンジン(MHIAEL)は3月7日、愛知県小牧市にある航空エンジン整備工場の拡張エリアを報道関係者に公開した。作業エリアを2割拡張し、将来的には現在の3倍に当たる月産15台に増産可能になる。航空需要が回復傾向にあることから、航空会社からのエンジン整備のニーズが高まっており、旺盛なMRO(整備・修理・分解点検)需要に対応する。

整備工場拡張エリアの完成式典でテープカットする三菱重工航空エンジンの牛田正紀社長ら=23年3月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 MHIAELは航空機向けエンジンの燃焼器や低圧タービンなど主要部品の製造や、MRO事業を手掛けている。MROで扱うエンジンはエアバスA320型機向けIAE製V2500、A320neo向けのプラット&ホイットニー(PW)製PW1100G-JM、ボーイング747型機や777向けのPW4000で、主力は1カ月5台、年間で60台扱うV2500となる。MHIAELによると、エンジン整備は通常4-5年程度の間隔、使用サイクルでは1万から1万5000サイクルで実施するといい、1台あたり平均で90日程度の作業になるという。

 小牧には事務所と整備工場、試運転設備「テストセル」があり、今回拡張したのは建築面積が約1万1600平方メートルある整備工場。延床面積を約2500平方メートル増床し、作業エリアを2割拡張した。拡張エリアは国土交通省航空局(JCAB)の審査などを経て、早ければ5月ごろから使用できる見通しで、バランス作業や研削などを行う大型の機械設備を導入し、整備台数を現状の月産5-6台から2026年までに月産10台以上、将来的には現在の3倍となる15台へ増産を目指す。

 年間整備台数が現在の60台から120台以上に倍増する2026年には、整備士も現在の120人から200人以上に増員する。

三菱重工航空エンジンで整備中のV2500エンジン=23年3月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

整備工場拡張エリアの完成式典であいさつする三菱重工航空エンジンの牛田正紀社長=23年3月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 MHIAELの牛田正紀社長は「お客様のMROニーズが高まっている良いタイミングで拡張できた」と話す。コロナ前には1000億円規模の事業だったが、2026年ごろには2000億円規模に拡充していく。牛田社長によると、取引先の航空会社数を増やすよりは、各社から受託する台数を増やす形でMRO事業を拡大していくという。

 一方、海外のMRO事業者と比べると、日本の場合は人件費などの関係で費用が割高になる傾向にある。牛田社長は「顧客からは仕事が丁寧だと評価をいただいており、エンジンを使っていただくとわかる」と、整備レベルの高さで勝負していく。

 MHIAELの源流は1920(大正9)年に発足した三菱内燃機製造(当時)の名古屋工場で、103年前に三菱重工の航空エンジン事業がスタートした。1983年からV2500に参画して民間機向けエンジンの主要部品の製造を開始し、民間機向けMRO事業には1993年に747向けのプラット&ホイットニー(PW)製PW4000エンジンの受託により参入。2014年に三菱重工が民間航空エンジン事業を分社化し、MHIAELが設立された。2020年には長崎工場を新設し、小牧と2拠点体制になっている。

小牧にある三菱重工航空エンジンの整備工場の拡張エリア=23年3月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

小牧にある三菱重工航空エンジンの整備工場の拡張エリア(同社提供)

完成式典の準備が整った三菱重工航空エンジンの整備工場拡張エリア=23年3月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

三菱重工航空エンジンの整備工場の既存エリアで整備中のPW1100G-JM(手前)とV2500エンジン=23年3月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

小牧にある三菱重工航空エンジンの整備工場既存エリア=23年3月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

V2500を採用したジェットスター・ジャパンのA320=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

PW1100G-JMを採用したANAのA320neo=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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