エアライン, ボーイング, 機体, 空港, 解説・コラム — 2023年2月28日 10:52 JST

JAL、成田で生鮮貨物をワンストップ輸出 翌朝に海外市場着

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 日本航空(JAL/JL、9201)とJALカーゴサービス(JCG)は2月27日、成田空港近くの成田市公設地方卸売市場で生鮮航空貨物の輸出を始めた。初荷は鮮魚やイチゴなど生鮮品約2.6トンで、バンコクやシンガポールなど5空港へ出荷された。成田市場は国内では初めて集荷から輸出手続き、航空貨物コンテナへの積み込みまでをワンストップで行えるようにし、海外に到着するまでの時間を短縮。収穫・水揚げ当日深夜に現地へ到着し、翌朝には海外市場に新鮮な農水産品が並ぶ。

成田市公設地方卸売市場で鮮魚を積み込んだ貨物コンテナを動かすJALカーゴサービスのスタッフ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
翌朝に海外で生鮮品販売
初荷の半分バンコクへ

翌朝に海外で生鮮品販売

 JCGが成田市場の高機能物流棟に入居し、温度調節機能を持つ市場内でワンストップ物流サービスを構築。収穫や水揚げ当日中の成田空港からの輸送機会が増え、市場と空輸の連携による高速・高鮮度輸送を提供することで、生鮮品の輸出拡大につなげる。

成田市公設地方卸売市場で貨物コンテナに鮮魚を積み込むJALカーゴサービスのスタッフ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港でバンコク行きJL707便に搭載されるワンストップ物流の貨物コンテナ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 これまでの物流では、集荷した翌日に輸出手続きや検疫、通関を経て貨物コンテナに生鮮品を積み込んでいた。成田から香港へ運ぶ場合、水揚げ翌日の深夜に現地へ到着していたが、新サービスでは1日早い当日深夜に着くことで、より鮮度の高い状態を維持できるようになる。

 千葉県のほか、茨城県や栃木県など関東北部、東北から出荷された生鮮品は、豊洲や大田といった都内の市場を経由して輸出されることが多く、成田で搭載する場合は一度都内に入ってから北上し、成田で集荷するといった経路上のロスがあり、海外で生鮮品が店頭に並ぶまで時間がかかる要因の一つだった。

ワンストップ物流での高速・高鮮度輸送の一例(JALの資料から)

 農林水産省は、現在は年間約1兆円の農林水産物・食品の輸出拡大を進めており、2030年には5兆円を目指している。JALの取り組みはこれに連動したもので、JCGの森本義規社長は「成田から年間約9万トンあるうち、JCGは約6000トンくらい扱っており、2023年度は9000トンくらいはいきたい」と抱負を語った。

 海外に到着するまでの時間が短縮することで、新たな市場開拓や他社便からの乗り換え需要を見込んでおり、割合については「半々くらいになるのではないか」と述べた。鮮度が高いまま輸出できるようになったことで、取扱量が増えることに加え、伊勢エビなど比較的高単価で運べるものも増えるという。

成田市公設地方卸売市場=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田市公設地方卸売市場でイチゴの検疫を行う農水省の職員=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田市公設地方卸売市場から出荷される鮮魚=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

初荷の半分バンコクへ

 27日の初荷はヒラメをはじめとする鮮魚やイチゴ合わせて約2.6トンで、バンコクとシンガポールのほか、香港、ベトナムのホーチミンシティとハノイへ向かった。

成田空港でワンストップ物流の貨物コンテナが搭載されるバンコク行きJL707便=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

日本から空輸された鮮魚が並ぶトンロー日本市場(資料写真)=22年9月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 このうち半分にあたる約1.3トンがバンコク向けで、「ワンストップ物流」のステッカーを貼った貨物コンテナ3つがバンコク行きJL707便(ボーイング787-9型機、登録記号JA873J)に搭載され、成田を午後6時19分に出発。バンコクのスワンナプーム国際空港には同日午後11時20分に到着した。

 バンコクでは、JAL傘下のJALUX(ジャルックス)がタイに設立した合弁企業「J VALUE」が日本生鮮卸売市場「トンロー日本市場」を運営。鮮魚や野菜、果物、牛肉などを現地のレストラン、ホテルなどに提供している。

 流通はJAL、JALUXに加えて、JALグループのジュピター・グローバル・リミテッド(JUPITER GLOBAL LIMITED、香港)の3社が担い、日本からバンコクへ空輸後、ジュピターのタイ現地法人が市場まで陸送している。流通経路を短縮することで、産地によっては東京よりもバンコクの方が新鮮な状態で届くようにした。

*写真は23枚。

成田市公設地方卸売市場のエントランス=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田市公設地方卸売市場で開かれた供用開始式典=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田市公設地方卸売市場で鮮魚を運ぶターレー=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALが鮮魚の積み込みに使う成田市公設地方卸売市場=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田市公設地方卸売市場で貨物コンテナに鮮魚を積み込むJALカーゴサービスのスタッフ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田市公設地方卸売市場で貨物コンテナに鮮魚を積み込むJALカーゴサービスのスタッフ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田市公設地方卸売市場からフォークリフトで運び出される鮮魚を積んだJALの貨物コンテナ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田市公設地方卸売市場からフォークリフトで運び出される鮮魚を積んだJALの貨物コンテナ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田市公設地方卸売市場から成田空港に到着した鮮魚を積み込んだJALの貨物コンテナ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田市公設地方卸売市場から成田空港に到着した鮮魚を積み込んだJALの貨物コンテナ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港でバンコク行きJL707便に搭載されるワンストップ物流の貨物コンテナ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港でバンコク行きJL707便の横に運ばれる鮮魚を積んだ貨物コンテナ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港でバンコク行きJL707便に搭載されるワンストップ物流の貨物コンテナ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港でバンコク行きJL707便に搭載されるワンストップ物流の貨物コンテナ=23年2月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

日本からトンロー日本市場に到着した鮮魚(資料写真)=22年9月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
日本航空

グループで生鮮航空貨物扱い
「東京より新鮮な魚が届きます」特集・JALが運ぶバンコク トンロー市場の生鮮品(22年10月14日)

成田で貨物強化
JAL、成田から生鮮貨物を当日輸出 国内初のワンストップ物流2月開始(22年12月21日)
JAL、成田に医薬専用定温庫 国内空港最大、売上25%増へ(22年9月30日)

ヤマトと貨物機
JALとヤマトのA321貨物機、なぜスプリング・ジャパンが飛ばすのか(22年11月22日)
JALとヤマト、A321貨物機で東京-北九州など4路線 スプリング・ジャパン運航で24年4月(2年11月22日)

  • 共有する:
  • Facebook
  • Twitter
  • Print This Post