開発中止が決まった三菱重工業(7011)のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」。米国で試験を行っていた4機の飛行試験機のうち、3号機(登録記号JA23MJ)は解体済みだが、残り3機の処遇は決定していないという。
米国でのスペースジェットの飛行試験拠点「モーゼスレイク・フライトテスト・センター(MFC)」は、2022年3月末で閉鎖。3号機が初の解体となった理由について、三菱重工は同機で実施する試験が完了したためだという。
3号機は2016年11月22日に初飛行。米国でローンチカスタマーである全日本空輸(ANA/NH)のカラーリングに塗り直され、2017年6月に開催された世界最大規模の航空ショー「第52回パリ航空ショー」に同機が初出展された。この時は地上展示のみで、翌2018年7月にロンドン近郊で開かれたファンボロー航空ショーでは飛行展示を披露した。
コロナ前の2019年6月には、名称がMRJから三菱スペースジェットに改められたことから、新塗装をまとってパリ航空ショーに姿を表した。
スペースジェットの試験機で飛行したものは5機で、4機が米国へ渡った。残り1機は、設計変更を反映して2020年3月18日に初飛行した通算10号機(JA26MJ)で、愛知県小牧市の県営名古屋空港にある。
米国に残る3機は、初号機(JA21MJ)と2号機(JA22MJ)、4号機(JA24MJ)。3号機のように解体するのか、展示先を募るのかなどは決まっていないという。飛行試験機を県営名古屋空港から米ワシントン州のモーゼスレイクまでフェリー(回航)する際は、米国で飛行試験を実施することを目的として、当局から臨時の飛行許可を得ていた。
仮に機体を日本へ戻すことを検討する場合、これまでのように臨時の許可が下りるのかも検討材料になるようだ。飛行が認められない場合は、3号機と同様にモーゼスレイクで解体するなど米国内で対処することになる。フェリーフライトや機体の保存は費用がかかるため、最も安価なのは米国で解体することだ。機体を保存するとしても、誰が多額の費用を負担するのかといった問題がある。
飛行試験が今後行われないことが確定した今、米国に残る飛行試験機の去就が注目される。
当紙スクープと正式発表
・三菱重工、スペースジェット開発中止を正式発表 泉澤社長「機体納入できず申し訳ない」(23年2月7日)
・【独自】スペースジェット、開発中止決定 次期戦闘機に知見生かす(23年2月6日)
モーゼスレイク
・三菱航空機、米モーゼスレイクの飛行試験拠点公開 スペースジェット改称後初「最終段階迎えつつある」(19年12月12日)
・MRJ、米モーゼスレイクで飛行試験初公開 ファンボロー航空ショーにはANA塗装機(18年6月28日)
3号機は解体
・三菱スペースジェット、米開発拠点閉鎖 3号機は解体済み(22年4月14日)
・三菱スペースジェット、3号機が初の登録抹消 ANA塗装でパリ航空ショーお披露目も(22年4月11日)
初号機から4号機の初飛行
・MRJ、飛行試験3号機が初飛行成功(16年11月22日)
・MRJ、4号機が初飛行 名古屋から試験空域へ(16年9月25日)
・MRJ、2号機の初飛行成功(16年5月31日)
・MRJが初飛行 YS-11以来53年ぶり、”11″並びの日(15年11月11日)