ピーチ・アビエーション(APJ/MM)は1月27日、乗客が機内で「ふるさと納税」ができるサービスの実証実験を本格始動させた。日本初の取り組みで、昨年11月から京都府京丹後市と先行実施しており、27日からは大阪府泉佐野市と愛知県小牧市、和歌山県有田(ありだ)市、大分県佐伯市の4市が加わり、5つの自治体で本格化させた。ピーチと各自治体はふるさと納税を入口に、交流人口の拡大など地域創生に取り組む。
—記事の概要—
・森CEO「ふるさと納税は入口」
・ふるさと納税サイトで目にとまらない
森CEO「ふるさと納税は入口」
機内ふるさと納税の対象路線は国内線全31路線で、実証実験は1月27日から3月31日まで。乗客が自身のスマートフォンやタブレットなどの端末から機内でアクセスできる「機内デジタルサービス」を使う。
利用方法は、搭乗前に「Peachアカウント」とクレジットカードを登録。搭乗後は、機内デジタルサービスの「ふるさと納税ページ」にアクセスして返礼品を選び、カード決済する。降機後、ピーチと自治体からメールで届く「回答フォーム」に必要事項を入力し、返信すると寄付が完了する。
返礼品は、5市の地場産品やピーチの航空券とセットになった宿泊クーポンなど。地域で抱える課題が共通していたり、似通った自治体と企業が連携することで、各地域の強みや特色を生かした地域活性化を目指す。今回参加する5市は、観光資源を持つものの、「観光地としての知名度向上」が課題だという。
27日に大阪市内で会見したピーチの森健明CEO(最高経営責任者)は、さまざまな自治体と共同で取り組むことについて、「広域に企業と連携することで新しいヒントや気づきがあると思う。時間を掛けてでも行きたくなる場所の魅力をプロモーションできると思う。空港から離れた地方とも連携していきたい」とあいさつした。
「ふるさと納税は入口。その先にある地方創生を目指している」(森CEO)と、ふるさと納税をきっかけに、現地を訪れてもらう取り組みを進める。すでに京丹後市とは滞在型の旅行商品を開発しており、今回加わった4市とも情報発信やふるさと納税と並行して現地を訪れてもらう施策を考えていくという。
また、現在の実証実験段階から参加自治体の増加によるサービス本格化の時期については「われわれはあまり(実証実験と)区別していないが、自治体側は納税などの手続きがあると思う」として、新たに参加を希望する自治体との調整などで対応できるという。
ふるさと納税サイトで目にとまらない
機内ふるさと納税の実証実験を2022年11月から先行実施した京丹後市は、空港や新幹線の駅がなく、東京から片道約5時間かかることから「東京からもっとも遠い街」とも言われている。訪問客の多くは近畿圏からで、関東圏など遠方からの誘客が課題であり、自主財源となるふるさと納税に力を入れている。京丹後市の中山泰市長は、「今はカニやカキの食の観光でにぎわっているが、通年の観光にしていきたい」という。
小牧市の場合は県営名古屋空港が近隣にあり、名古屋駅にも近く交通の便は良いものの、発祥の「名古屋コーチン」などの名産品を「ふるさと納税のいろいろなサイトに掲載しているが、なかなか目にとまりにくい」(平岡健一副市長)ことが課題だという。
ふるさと納税に力を入れてきた泉佐野市の千代松大耕市長は、今回の取り組みについて「ピーチの就航空港以外の自治体とも連携できる。ピーチの利用者は旅行への意欲があり、これまでの流れに加えて地方から地方への旅も生み出せるのではないか」と、今回の取り組みに期待を寄せた。
また、泉州タオルやタマネギなど泉佐野市の名産品を訴求していく狙いもあるといい、「ふるさと納税を利用したことがある人は、全体の35%という状況。今回は地元の特産品を幅広い方々に対してPRのできる機会と考えており、これまで利用していなかった人にも利用していただきたい」(千代松市長)と話していた。
佐伯市の山﨑吉明副市長は「ふるさと納税が3年くらい伸びのない状態で、分析してみると利用する層が限られていたので、給付金額を抑えた商品を開発したところ(反応が)よかった。ピーチの利用者は20代から30代で、ふるさと納税をこれからやっていただけるポテンシャルの高い方だと思う」と述べ、今回の取り組みで裾野の拡大に期待しているという。
有田市でふるさと納税を担当する梅本陽子地方創生推進監は「ウナギが45%くらいを占めており、ミカンも合わせると9割くらい。ピーチとの連携で体験型の返礼品を一緒に作りたい」と、市を訪れてもらう取り組みの強化を目指す。
関連リンク
Peach Aviation
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