全日本空輸(ANA/NH)グループで機内食を手掛けるANAケータリングサービス(ANAC)は1月18日、従業員がメニューを考案・開発する「第8回レシピコンテスト」を成田空港近くの同社で開催した。全4部門のうち和食と製菓の2部門は2022年12月に開かれており、18日は洋食と製パンの最優秀賞が決定した。製パン部門では、普段は取引先となる海外の航空会社との調整などに携わる営業部門の女性社員が最優秀賞に輝いた。
—記事の概要—
・「野菜メニュー」と「カンパーニュ」
・塩昆布のおいしさ「取引先に提案したい」
「野菜メニュー」と「カンパーニュ」
レシピコンテストは、調理技術の向上や人材育成などを目的として2014年度にスタート。コロナ影響で中止となった2021年度を除き毎年開いている。「見栄え」「独創性」「おいしさ」「原価」の4つと、メニューを開発した出場者の「説明」を加えた5項目計100点満点で判断し、おいしさは30点満点、説明は10点満点、そのほかの3項目は20点満点ずつで審査した。
洋食部門のテーマは、「メイン料理として提供できる野菜メニュー」で、野菜と乳製品は使用できるが、肉と魚は使えない。ANAの機内食のうち、ベジタリアン向けに提供しているメニュー(VLミール)と同じ条件にした。ANAによると、近年は健康志向の高まりで、野菜を中心にした機内食に対する要望が増えており、メニューにも反映しているという。
プレゼンテーションでは、機内食用の食器に加えて、出場者が選んだ食器による盛り付けも披露された。ANACの清水誠総料理長によると、味覚だけでなく視覚に訴える料理人としての総合的なセンスも評価したいという。
製パン部門は、「カンパーニュ」がテーマ。フランスパンの一種で形や具材に決まりがないことから選ばれた。
18日の最終選考には、洋食は6品、パンは4品がエントリー。審査員はANACの川崎三喜男会長や石田洋平社長、清水総料理長、ANA商品企画部の黒田恭良担当部長ら18人が務め、試食しながら工夫した点などを出場者に尋ねていた。
塩昆布のおいしさ「取引先に提案したい」
最優秀賞は、洋食部門は調理統括室洋食統括部の末(すえ)辰也さんの「様々なシリアルのガレット 野菜と果実のコンポジション」、製パン部門は羽田グローバル営業部のルー・チューリーさんの「パン・オ・ルヴァン 塩昆布とゴマ」が受賞した。
末さんのメニューは動物性のうま味が使えない中で、マッシュルームのソースをナッペして補い、歯ごたえと柔らかさといった素材による食感の変化を付けて飽きないようにした。春から夏のメニューを意識し、彩りも工夫したという。
普段は機内食のうち、温かい食事の開発に携わっている末さんは、社外のコンテストにも出場歴があった。「コンテストでは写真の見栄えが良くないと書類審査も突破できません」と、おいしさだけでなく、視覚に訴えることの重要性を感じており、盛り付けにも気を遣って挑んだ。
台湾にルーツを持つルーさんは、普段はエバー航空(EVA/BR)など取引先の航空会社との調整などにあたっており、パン作りが本業ではないという。コロナの影響で休みが増えた時に、パン好きが高じて趣味として始め、今回のコンテストに挑戦したそうだ。
「まさか選ばれるとは思いませんでした」(ルーさん)と驚きを隠せない様子だったが、日本で初めておにぎりを食べた際、塩昆布に魅力を感じたことから和食とパンの融合を試みたといい、「取引先に提案したいです」と笑顔で話していた。
関連リンク
全日本空輸
ANAケータリングサービス
和食と製菓
・ANAケータリング、食品ロス減らす“SDGs弁当”が最優秀賞 レシピコンテストで人材育成(22年12月22日)
ANAの機内食
・ANA、国内線プレミアム機内食刷新 朝食はボリュームサンド、紙容器でプラ削減(22年11月15日)
・ANA、ヴィーガン・ベジタリアン機内食刷新 誰でもおいしく食べられるグリーンカレー(22年10月19日)
・ANA、国際線機内食でケールフォカッチャ 調理かす堆肥に(22年9月5日)
・ANA、国際線でヘルシーなカツ丼 おから・こんにゃく由来Deats使用(22年2月22日)
・ANA、低糖質や低塩機内食リニューアル 噛んでうま味(21年9月27日)
・「求められているのは機内と同じもの」特集・9万食売ったANA機内食通販の舞台裏(21年2月7日)