前回からの続き。日本航空(JAL/JL、9201)が100%出資する中長距離LCCのZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)が就航したのは2020年6月3日。まだ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が大きく、1路線目の成田-バンコク(スワンナプーム)線は旅客便を運航できず、ボーイング787-8型機(2クラス290席)に貨物だけ積む貨物専用便としてスタートした。
しかし、西田真吾社長は貨物便でスタートすることは、考えてもみなかったことだという。インタビュー第2回は、コロナの影響について聞いた。
—記事の概要—
・考えたこともなかった貨物便
・日本語コールセンターは日本へ
(1)「この値段だったら」のお客様増える
(終)「エアラインの常識は世間の非常識」
考えたこともなかった貨物便
── 2020年6月3日に1路線目の成田-バンコク線が就航。当初は貨物便としてスタートした。
西田社長:直前までそんなことを考えたこともなかった。わぁ、コロナだ、訓練は進めなければいけない、この先のパイロットや客室乗務員の入社予定も決まっている──、という状況だった。
きれい事のように聞こえるかもしれないが、当時テレビで酒造メーカーが手指消毒用のアルコールを作り始めたとニュースでやっているのを見て、我々も何かできることがあるんじゃないのか、という気持ちになった。
ある部門長が「貨物でやりましょうよ」と言い、計算したら貨物でもペイできるし、訓練もできるので飛ばそう、となった。うちの客室乗務員1期生は、貨物便でお客さん役を交代でやりながら訓練していた。
航空会社はみんなしんどかったと思うが、787は貨物が載せられて燃費が良いので貨物便で始めることができた。うちの社員たちは、しんどい時でも何かのチャンスだと前向きな発想をしてくれる人がいっぱいいるのがありがたいことだ。
海外のように全便運休で待つ、という選択肢もあったが、結果的にはコロナが長引いた。あそこで踏ん切りつけなかれったらジリ貧になっていた、という怖さを振り返ると感じる。
片道だけ旅客便というのもやっていたが、各国の航空当局に「片道でいいので旅客便をやらせてください」と担当者がお願いして、1つずつ開けていった。
── 乗客を乗せないよりは乗せた方が良いと。
西田社長:貨物で油代は取れていた。結果的には今年10月に日本の水際対策が緩和されてインバウンドが
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