IATA(国際航空運送協会)のウィリー・ウォルシュ事務総長は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としての現在のマスク着用について、「必要ないと思う」と述べた。その上で、航空機内で乗客にマスク着用を呼びかけるのであれば、ほかの交通機関でも着用しなければ意味がないとの見解を示した。
スイスのジュネーブにあるIATA本部で現地時間12月7日に、Aviation Wireの取材に応じたウォルシュ事務総長は、「私たちが懸念しているのは、飛行機ではマスクを着用しなければならないが、電車やバス、車では必要ない、と区別しようとする人たちだ。機内はほかの交通機関よりも空気がきれいなので、機内だけマスクを義務付けてもまったく意味がない」と語った。
欧州域内路線の機内や、ジュネーブを走るトラム(路面電車)の車内では、マスクを着用している人はほとんど見当たらず、コロナ前の状態に戻っている。日本から海外に出ると、屋内も含めてマスク着用を不要とする国がスイスを含めて多数といえる。
一方、日本国内では厚生労働省が屋外ではマスク着用を原則不要としつつ、屋内は会話をしない場合などを除き、着用を求めている。このため、日本の国内線や、日本発着の国際線では機内でのマスク着用が続いており、利用者の中には違和感を感じる人もいる。
ウォルシュ氏は「昨年イタリアへスキーに行った際、屋外でもスキー場のリフトに乗る時はマスクを着用しなければならなかった。しばらくすると、人々はこれはおかしいと思うようになった」と振り返り、「こうしたの措置の中には、(コロナ対策としての)見栄えをよくするためのものだと認めざるを得ないものがあり、本当に健康上の必要性や科学的な根拠に基づいているわけではないものがある」と指摘した。
「日本人は駅でもマスクをつけている。どこでもマスクを着用しなければならないのであれば、機内でマスクをつけていても問題はないだろう。しかし、機内だけマスク着用を求めるのであれば問題だ」と、マスク着用を不要とする場合、公共交通機関が一体的な運用をしなければ意味がないとの考えを示した。
関連リンク
マスクの着用について(厚生労働省)
IATA
・世界の航空会社、23年に黒字化へ IATA事務総長「何が間違っていたのか反省重要」(22年12月6日)
・IATAウォルシュ事務総長、日本の入国制限「科学に基づいたものではない」緩和求める(22年6月22日)