IATA(国際航空運送協会)は現地時間12月6日、世界の航空会社による今年の純損益予想を69億ドル(約9433億6455万円)の赤字になる見通しだと発表した。前回6月に発表した97億ドルの赤字見通しから赤字幅を28億ドル圧縮出来る見込みで、来年2023年には黒字化するとの予測を明らかにした。
2020年に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、世界の航空会社は2020年に1377億ドル、2021年は420億ドルの損失を計上。今年はこれらと比べて大幅に改善できる見通しで、2023年は47億ドルの黒字になると予測した。
—記事の概要—
・水際対策の効果「せいぜい2、3日」
・クリスマスのピーク「うまくいくはずだ」
水際対策の効果「せいぜい2、3日」
ジュネーブで6日に会見したIATAのウィリー・ウォルシュ事務総長は、「今年1年を振り返ると、景気回復が勢いを増しているのは間違いないだろう。アジアは例外で影響が残っているが、世界のその他地域では非常に強い回復が見られ、(航空旅客の)国内市場は2019年の水準にほぼ戻っている」と語った。
ウォルシュ事務総長は、各国政府が実施した新型コロナウイルスの水際対策について「これらの制限の多くを振り返ると、感染を抑制したり、減少させたりすることにほとんど効果がなかったことは、現在入手可能なデータで非常に明らかだと思う。このことは、世界中の政府や規制当局にとって、重要なメッセージだ」と述べた。
「IATAや他の独立機関の分析によると、ほとんどの場合、(感染拡大の)ピークをせいぜい2、3日、数日遅らせることができたということだ。しかし、この規制がもたらす経済的影響は、航空業界を含む多くの産業にとって壊滅的なものだ」と、多くの水際対策が感染拡大を抑えることに効果がなかったことを、各国政府は受け止めるべきだと訴えた。
「このような難題に再び直面することになるだろう。何がうまくいったのか、そしておそらくもっと重要なのは、何が間違っていたのか、そしてその間違いを今後短くするために、私たちは反省することが重要だと思う」と、コロナ対策の問題点を直視すべきだと強調した。
クリスマスのピーク「うまくいくはずだ」
また、世界規模で起きたコロナ後の人手不足による空港運用の混乱について、ウォルシュ事務総長は「一部の例外を除き、クリスマスシーズンのピーク時のサービスはうまくいくはずだ」との見通しを示した。
ロシアのウクライナ侵攻による影響については、「誰もがこの地域に平和が訪れることを望んでいる。ロシアからの国際線市場という点では、航空産業への影響は限定的だ。ウクライナは全体から見れば比較的小さな国なので、大きな影響を及ぼすような直接的な経済的影響はないものの、年間を通じて原油価格が大幅に上昇した。ロシア領空閉鎖の影響は(これまで領空を通過する国際線を運航していた)すべての航空会社に及んでいる」と語った。
関連リンク
IATA
マスク着用の必要性
・IATA事務総長、マスク着用「必要ないと思う」 機内だけは「意味ない」(22年12月8日)
IATA
・IATAウォルシュ事務総長、日本の入国制限「科学に基づいたものではない」緩和求める(22年6月22日)
・IATA、航空各社の損失97億ドル 第78回総会開幕、23年黒字化視野(22年6月20日)
・IATA、各国政府に国境閉鎖なき感染対策要望(22年6月20日)
・IATA、日本に入国制限緩和求める「アジアの重要な目的地」(22年6月20日)
水際対策の緩和
・水際対策緩和、入国上限撤廃 接種証明・陰性証明は継続(22年10月11日)
・JAL赤坂社長「日本人だけいない」国内線は年内回復、国際線2025年視野(22年10月5日)
・コロナ水際対策、10/11から追加緩和 新GoTo「全国旅行割」も(22年9月23日)
・政府の水際対策、10月以降さらに緩和へ 岸田首相が意向(22年9月22日)
・水際緩和、入国は早くなったのか バンコク→羽田で検証(22年9月15日)