日本航空(JAL/JL、9201)と東京ベイ東急ホテル(千葉・浦安市)は、JALのボーイング787型機から取り下ろした部品などを活用したコンセプトルームの提供を12月2日から始めた。787の就航10周年を記念した2023年4月までの企画で、廃棄部品から製作した家具や調度品などを設置し、整備士たちが中心となって執筆・制作した宿泊者限定の熱い思いがこもった解説冊子も用意した。
—記事の概要—
・787就航10周年企画
・ピトー管の重さ体験
・汚れや傷残しストーリー性
787就航10周年企画
コンセプトルームの名前は「JAL 787 10th Anniversary Room」。広さ32平方メートルの18階1806号室に、787の主脚に使っていたホイールから製造したテーブルや、客席頭上の読書灯から製作したテーブルライトを設置し、速度を計測する「ピトー管」や発電機の部品も展示している。宿泊者には宿泊証明書を兼ねた展示品の解説冊子「室内展示品解説ブックレット」をプレゼントするほか、機内の雰囲気を少しでも感じてもらおうと、JALオリジナルのカップ麺「うどんですかい」と「そばですかい」も用意した。
料金は1室2人利用で2万4200円から。JALの787は10年前の2012年4月22日に就航し、10周年の最終日にあたる2023年4月21日宿泊分までを提供期間とした。
両社のコンセプトルームは、777の国内線仕様機のシートやカーペットなどを活用した「ウイングルーム」に続き2部屋目。調度品は、JALグループの整備会社JALエンジニアリング(JALEC)の整備士や、同社が連携を持ちかけた東京・墨田区の浜野製作所が今回の企画のために作り替えた。
ピトー管の重さ体験
JALECでは、機体から取り下ろした廃材や部品などを再利用し、別の製品にアップサイクル(作り替え)する取り組みを進めている。
今回の企画を進めたJALEC部品サービスセンター企画グループ主任の矢田貝弦さんは、「ウイングルームに宿泊されたお客様から『シートに触れられたのはいいが、部品を直接触ってみたい』という声をいただきました。コアなファンの方も、ピトー管は知っていても、どれくらいの重さなのかを持ち上げて体感した方は少ないのでは」と、実機に取り付けられていて、利用者が重さを実感する機会がないピトー管などを用意したという。
ホイールやピトー管など室内に持ち込んだものは、あえて使用感があるままにした。テーブルに加工したホイールは、2019年10月から2021年12月まで、ボストンやニューヨーク、ヘルシンキなどへ飛んでいたという。
ピトー管は2020年3月から今年2月まで、787-9(JA849J)で使われていたもので、使用時間は2759時間。エンジン発電機の部品は「VSFG(可変周波数始動発電機)」と呼ばれる発電機内部の部品で、2019年11月から今年8月まで使われていた。
読書灯テーブルライトは、787で約10年間使用し、客室改修で役目を終えたものを家庭用電源で点灯するように加工。1つで4席を照らすもので、客室乗務員を呼ぶライトも点灯する。
また、ベッドカバーは国際線ビジネスクラスのシートカバーと同じ生地で作った。客室改修によるデザイン変更前のもので、生地は美術織物の老舗で1894(明治27)年創業の龍村美術織物(京都市右京区)が制作した。
汚れや傷残しストーリー性
実機でホイールが使用されていた時期は、コロナの影響で旅客便は運航できない中でも、787は貨物専用便として運航されていた。宿泊者限定に用意した解説冊子では、ホイールがどのような履歴をたどったかも、各部品の役割などとともに解説した。
矢田貝さんは「ホイールは年間で10個程度交換され、これまでは廃棄されていました。テーブルに加工したのは初めてで、ほぼ手を加えず、汚れや傷を残すようにして、ストーリー性を大事にしました」と話す。
今回用意したもののうち、ホイールテーブルと読書灯テーブルライトは、下町の町工場として紹介されることも多い浜野製作所が製作。「町工場の人たちと一緒に何かやりたいと思っていたのと、両者が課題と感じているのが次世代人材の育成です。飛行機が壊れなくなり、整備士が考える場を作りたかったです」と矢田貝さんは言う。
廃材を活用しながら、宿泊客に楽しんでもらえるよう心掛けて、今年7月ごろから準備が本格化したという。
「ピトー管も発電機部品もお客様が間近で見たり、触ったりできないものですが、運航に必要な速度を測るピトー管も、電気飛行機と呼ばれる787で心臓部となる発電機も運航を支えてきた重要な部品です」と、ほかでは体験できない空間を目指したという。
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