エアバス, エアライン, 機体, 解説・コラム — 2022年11月22日 22:41 JST

JALとヤマトA321P2F貨物機、カタール航空機を改修

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 日本航空(JAL/JL、9201)とヤマトホールディングス(9064)が、エアバスA321ceo P2F型貨物機で2024年4月から運航する貨物便。東京(成田・羽田)-札幌(新千歳)と北九州、成田-那覇、那覇-北九州の4路線を1日21便運航する。

ヤマトが受領済みのA321ceo(JAL提供)

 首都圏から北海道や九州、沖縄への長距離トラックによる宅急便輸送の一部を補完するもので、ヤマトが貨物機を導入するのは初めて。また、国内の航空会社がA321P2Fを運航するのも初となる。

 A321P2Fは旅客機を貨物機に改修するもので、ベースになった機体はカタール航空(QTR/QR)のA321ceo。3機はどのような機齢などの機体なのだろうか。

—記事の概要—
機齢12年の中堅機
貨物機「ボラティリティ高い」

機齢12年の中堅機

 当紙の調べでは、3機の登録記号はJA81YAから83YAまでの連番になる見込み(関連記事1)。JA81YAは元カタールのA7-AIA、JA82YAはA7-AICを改修し、残る1機は運航中のA7-AIDが退役後、JA83YAの母体になる。

ヤマトが導入するA321ceo P2F貨物機(同社提供)

 3機のA321ceo(従来型A321)は、12年前の2010年2月から12月にかけてカタールへ引き渡された機体で、座席数は2クラス182席(ビジネス12席、エコノミー170席)。最初に退役したA7-AIAの最終営業運航は、2021年12月19日のイスタンブール(トルコ)発ドーハ(カタール)行きQR242便だった。

全機キャンセルとなったカタール航空のA321neo(イメージ、エアバス提供)

 カタールは12機のA321ceoを導入しており、A7-AIDが現在運航している最後の機体。カタールは大型機A350の塗装劣化問題により、エアバスとは裁判沙汰になっている。今年1月に50機発注済みのA321neoを全機キャンセルしており、A350も19機分のA350-1000の受注残が削除されており、エアバス機の発注はゼロの状態が続いている。

 一方、カタールの整備体制は定評があることから、同社の機体は中古機としては“出もの”である可能性が高い。今回A321P2Fに改修される機体は、エンジンが当初運航会社として予定していたジェットスター・ジャパン(JJP/GK)のA320と同じIAE製V2500であることや、機齢が12年程度と貨物機としての運航に支障がないこと、機体の状態の良さなどから選ばれたようだ。

 運航はこのように当初はJALが50%出資し、A320とA321LRを運航するジェットスター・ジャパンとしていたが、2021年6月に連結子会社化したスプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)に変更した(関連記事2)。A321P2Fの整備も、両社と同じくグループの整備会社JALエンジニアリング(JALEC)が受託する。

カタール航空のA321ceoのシートレイアウト(同社サイトから)

ヤマトが導入するA321ceo P2F貨物機のメインデッキカーゴドア(イメージ、JAL提供)

 3機のA321P2FはヤマトHDがリース導入する。これまでに2機受領しており、最後の1機は2023年2月に受領する見通し。改修作業はエアバスとSTエンジニアリング(シンガポール)の合弁会社、独EFW(エルベ・フルクツォイヴェルケ)が担い、2023年3月からシンガポールで始める。

 A321P2Fは客室だったメインデッキには、AAYコンテナを14台、旅客機でも貨物室として使用していた床下のロワーデッキには、AKH(LD3-45W)コンテナを10台搭載できる。これにより、A321P2Fに改修後は1機当たり28トンの貨物を搭載でき、10トン車約5-6台分に相当する積み荷を運べる。

貨物機「ボラティリティ高い」

 JALは自社で貨物専用機を購入するビジネスモデルについては、「ボラティリティが高い」(財務・経理本部長の菊山英樹専務)と今のところ否定的だ。エアバスはJALも導入しているA350をベースとした大型貨物機A350F(最大ペイロード109トン)の開発を2021年7月に発表。ボーイングも今年1月に次世代大型機777Xの貨物型777-8F(同118トン)を発表したが、いずれもJALは発注しておらず、ヤマトがリース導入したA321P2Fが唯一運航する貨物機になる。

ヤマトが導入するA321ceo P2F貨物機のメインデッキ内(イメージ、JAL提供)

 2010年1月の経営破綻前は、JALもジャンボの愛称で親しまれた747の貨物機である747-400F(同112トン)などを運航していたが、事業見直しで手放した。現在は旅客機の床下貨物室(ベリー)や他社との提携で貨物事業を展開している。

JALの医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」で医薬品を運ぶ電動フォークリフト=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 一方で、空港の貨物インフラへの投資は積極的だ。今年10月から成田空港に新設した医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT(JALメディポート)」を使った保管サービスをスタート。高付加価値貨物である医薬品の貨物収入を、今後2-3年で2021年度実績比25%増を目指す。

 今回のA321P2Fを運航するビジネスでは、ヤマトがA321P2Fをスプリング・ジャパンにサブリースし、運航便はJAL便名を付与するコードシェア(共同運航)を実施。同機の貨物搭載スペースをJALがフォワーダー(利用運送事業者)に販売する。

関連リンク
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