エアバスは現地時間10月28日、同社初の航空機であるA300型機の初飛行50周年を迎えたと発表した。世界初の双発ワイドボディー機で、開発機のA300B1(MSN1、登録記号F-WUAB)はエアバスの最終組立工場があるトゥールーズ発着で1時間25分飛行した。
50年前の初飛行では、高度1万4000フィート(4300メートル)で最高速度185ノット(342.6キロ)に達した。オートパイロットが作動し、可動面のテスト、着陸装置の格納と展開が行われた。トゥールーズのブラニャック空港に戻ると、トゥールーズで有名な「ヴァン・ドータン」と呼ばれる強い突風が吹き、横風を制御した着陸が必要となったが、マックス・フィシュル機長が巧みに操縦したという。
1960年代、欧州の航空機メーカーの世界シェアは10%程度で、残り90%は米国の3大メーカー(ボーイング・ダグラス・ロッキード)が占めていた。1967年7月にフランスと西ドイツ(当時)、英国の3カ国の政府間で「エアバス共同開発・生産のための航空分野での欧州協力強化」の枠組み合意が成立。270-300席の航空機開発が始まり、A300の由来になった。「エアバス」は1960年代に航空業界で使われていた一定の大きさと航続距離を持つ民間航空機を指す一般的な言葉で、後に社名となった。また、英国政府は1969年4月に、商業的な見通しが立たないとして、プロジェクトから脱退した。
A300の客室には2本の通路があり、1列8席のシートが並べられた。腹部には貨物コンテナ「LD3」が2列並べられる貨物室が設けられ、エンジンは米GE製CF6-50Aが選定された。また、機種名は新形態を反映し、A300Bと命名された。
A300Bは試作機を作らず、開発機の改良を重ねた。最初の機体となったA300B1 MSN1の製造は1969年9月に始まり、1972年9月28日にロールアウトした。その後、MSN2はA300B1の2号機として製造され、MSN3はA300B1の胴体延長型A300B2の初号機となった。A300B2は、エールフランス航空(AFR/AF)の要望で開発され、胴体が2.6メートル長く、座席数は2クラス251席とされた。3機は飛行試験とデモフライトに投入され、初飛行から1年半足らずで予定より若干早い1974年3月11日に型式証明を取得した。
量産初号機となったのはMSN5のA300B2(F-BVGA)で、1974年5月10日にエールフランスへ引き渡され、同月23日のパリ-ロンドン線が初便となった。
その後、最大離陸重量増加と燃料タンクを増やした航続距離延長型のA300B4、パイロット2人乗務を想定した初のワイドボディー機となった短胴型で200席クラスのA310、A310で実施した改良を反映した次世代機A300-600、貨物機のA300-600F、大型輸送機A300-600ST「BelugaST(ベルーガST)」などが登場した。2007年7月の製造終了までにA300/A310ファミリーを計878機製造した。
日本の航空会社では、東亜国内航空(TDA→日本エアシステム・JAS→日本航空・JAL)と佐川急便グループのギャラクシーエアラインズ(09年清算)が導入した。
現在は37社がA300とA310合わせて250機以上を運航。このうち75%が貨物機で、世界で3番目に多く運航されている貨物機だという。60%以上が主要顧客4社によって運航されており、エアバスによると少なくとも2030年まで飛び続けるという。
*写真は12枚。
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