機体, 解説・コラム — 2022年10月23日 23:33 JST

クルマみたいに注文できるホンダジェット 最新「Elite II」は客室も刷新

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 本田技研工業(7267)の米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)が、小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」の最新型「HondaJet Elite II(ホンダジェット・エリートII)」を発表した。

 2014年5月の量産初号機公開時からボディーカラーを5色展開するなど、バイクや自動車のようなアプローチが特徴的なホンダジェット。今回のエリートIIでは、特別色も用意した。エリートIIの改良点や、今後の動きをまとめた。

ホンダジェット・エリートIIの特別色「Black Edition」(HACIのウェブサイトから)

—記事の概要—
クルマのような多色展開
改良型で航続距離・居住性向上続ける

クルマのような多色展開

 エリートIIは、パイロット1人と乗客3人の計4人搭乗時の航続距離は1547海里(約2865km)で、2021年に発表された「HondaJet Elite S(ホンダジェット・エリートS)」の1437海里(約2661km)から204km延びた。燃料の搭載スペースを増やし、最大離陸重量も1万1100ポンドに増え、新型グランドスポイラーやガーミン製G3000をベースにカスタマイズしたアビオニクスなどを採用した。

ホンダジェット・エリートIIのエクステリアカラー「ディープシーブルー」(HACIのサイトから)

 性能向上だけでなく、ボディーカラーは特別色の「Black Edition」を新たに設定。内装にはグレーを基調にした「スチール」と、暖かみのあるベージュを基調にした「オニキス」の2種類が加わり、機内通路の床材には従来のカーペットのほか、木目調のデザインが選べるようになった。

 ほかのビジネスジェットもカラーリングをカスタマイズできるが、ホンダジェットは自動車のような感覚で外観や内装の色をオーダーできるよう、標準構成を多くそろえている。パイロット1人と乗客6人、またはパイロット2人と乗客5人というサイズも自動車のようで、個人所有の飛行機も移動手段として浸透している北米では、マイカーのような存在だ。

 今回の改良では、機内壁の遮音材を刷新して機内に流れ込む風切り音を抑える設計にするなど、ノイズ低減の工夫を施したことで客室の静粛性を向上させており、自動車の年次改良のようだ。

ホンダジェット・エリートIIのインテリアカラー「スチール」(左)と「オニキス」(HACIのサイトから)

改良型で航続距離・居住性向上続ける

 ホンダジェットの型式はHA-420で、FAA(米国連邦航空局)が機体の安全性を証明する「型式証明」を2015年12月8日付で取得。米国籍機(Nナンバー)として販売できるようになり、同月23日には量産初号機を引き渡したと発表した。2016年5月にEASA(欧州航空安全庁)から、2018年12月には国土交通省航空局(JCAB)から型式証明を取得。2021年通期(1-12月期)の引き渡しは37機(前年比6機増)となり、2017年から5年連続で小型ジェット機カテゴリーの世界最多納入を記録している。

2015年から引き渡しを開始したホンダジェット=15年4月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 初の改良型は、2018年5月27日に発表された「HondaJet Elite(エリート)」で、航続距離を延長し、客室内の静粛性を高めた。同年10月には既存機の性能向上オプション「パフォーマンスパッケージ」を発売し、資産価値を高められるようにした点も興味深い。3年後の2021年5月にはエリートSが発表された。

 今回発表されたエリートIIは、性能向上に加えて客室仕様をフルモデルチェンジ。米フロリダ州オーランドで10月17日から20日まで開かれた世界最大のビジネス機専門の航空ショー「NBAA」で、モックアップがお披露目された。客室だけでなく、コックピットの居住性を改善するオプションや、自動操縦の機能強化も注目ポイントと言える。

 希望する飛行特性に基づいた出力管理の自動化によりパイロットの負荷を軽減し、機体からより正確で効率的なパフォーマンスを引き出すことができる「Autothrottle(オートスロットル)」が、2023年前半には利用可能になる予定。2023年後半には、緊急時に人の介入なしに機体を自律的に制御して着陸させる「Emergency Autoland(エマージェンシー・オートランド)」の発売を予定している。

ホンダジェット・エリートIIのコックピット(HACIのウェブサイトから)

ホンダジェット・エリートIIの客室(HACIのウェブサイトから)

「HondaJet 2600 Concept」(ホンダ提供)

 昨年のNBAAでは、現行機より1つ上の機体サイズ「ライトジェット機」クラスのコンセプト機「HondaJet 2600 Concept」のモックアップを公開。航続距離2625海里(約4862キロ)、巡航速度450ノット(時速約833キロ)で、最大11人の乗客乗員が搭乗でき、同クラスの機体では初めて米大陸の横断が可能になる。熟成が進んだエリートIIの発表で、発展型となる2600コンセプトの登場も近づいてきたと言えそうだ。

関連リンク
HondaJet
HondaJet Japan

操縦記
“空飛ぶスポーツカー”ホンダジェット操縦リポート 静かな機内と飛ばす楽しさが印象的(17年11月10日)

エリートII
ホンダジェット「Elite II」発表 航続距離延長や自動化、新色も(22年10月18日)

藤野社長インタビュー
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