青が基調の全日本空輸(ANA/NH)の機体が緑色に──。ANAはサステナビリティ(持続可能性)をテーマにした特別塗装機「ANA Green jet(ANAグリーンジェット)」の1号機(ボーイング787-9型機、登録記号JA871A)を10月3日に羽田空港の格納庫で公開した。5日の羽田発サンフランシスコ行きNH108便を皮切りに、欧米を中心とした国際線に投入。11月には国内線に2号機(787-8、JA874A)を就航させ、CO2(二酸化炭素)排出抑制など環境負荷低減につながる取り組みを国際線と国内線それぞれで実践していく。
環境負荷低減につながる活動を実践するグリーンジェットは、機内サービスや運航形態などが国際線と国内線で異なることから1機ずつ投入。「水と緑」をモチーフにした外観デザインは共通で、客室乗務員は同じく「水と緑」をモチーフにしたデザインのエプロンを着用する。客室の照明やBGMも新たに専用のものを用意した。
—記事の概要—
・サメ肌加工でCO2削減
・ヘッドレストカバーはヴィーガンレザー
・緑のANA機初代はQ400
サメ肌加工でCO2削減
機体左側面に「ANA Future Promise」のロゴと緑の葉のモチーフを、右側面には「SAF Flight Initiative」のロゴと水のモチーフを機体全体に描いた。座席数は国際線機材の787-9が3クラス215席、国内線幹線を主体に運航予定の787-8は2クラス240席となる。
また、機体表面には「サメの肌」から着想したニコン(7731)の「リブレットフィルム」を試験装着。サステナブル素材を使ったヘッドレストカバーなどを採用した。
リブレット(鮫肌)加工は、鮫肌加工のフィルムを貼り付けることで、CO2排出量削減を目指す。機体表面にサメの肌のようなざらざらとした「リブレット加工」と呼ばれる特殊加工を施すことで、飛行中の空気摩擦抵抗を低減でき、結果的にCO2排出量や燃費改善につなげられるという。
今回は耐久性の検証が目的で、空気の流れが激しくなる右主翼付け根と、胴体上部の2カ所にリブレットフィルムを試験装着した。大きさはリブレットフィルム6枚を一組とし、縦35センチ×横45センチで貼り付けた。検証を経て大判のフィルムを用意するという。ANAが保有する全機材の機体表面80%にフィルムを貼った場合、燃費改善は2%にとどまるが、年間燃油費を80億円削減し、年間CO2排出量を30万トン削減できるという。
ヘッドレストカバーはヴィーガンレザー
機内では、環境に配慮した2種類の素材「ヴィーガンレザー」を使ったヘッドレストカバーを採用。ひとつは東レ(3402)の植物由来比率を世界最高水準に高めた銀面調人工皮革「Ultrasuede nu」を使ったもので、もう一つは青森産リンゴジュースの絞りかすを活用した合成皮革を開発するスタートアップ企業appcycle(青森市)の「RINGO-TEX」を採用した。
LEDによる照明はグリーンのライティングを用意。機内BGMは、豊かな自然を想像できるヒーリングミュージックを初めて採用した。
また、航空貨物を覆う航空貨物用プラスチックフィルムも見直した。国内主要空港での年間廃棄量が約600トン以上あることから、双日プラネット(千代田区)と共同で使用済みフィルムを回収し、再び航空貨物用フィルムや他のプラスチック製品にリサイクルする。
グリーンジェットの運航期間は、数年程度を見込んでいる。
緑のANA機初代はQ400
ANAのグループの機体は青を基調としたデザインで、緑色を配した機体は2018年3月12日に運航を終えた特別塗装機「エコボン」以来約4年ぶり。エコボンはエコロジーの「エコ(Eco)」と、フランス語で「良い旅を!」を意味する「ボン・ヴォヤージュ(Bon Voyage)」からの造語で、カナダのボンバルディアが製造するターボプロップ(プロペラ)機Q400(DHC-8-Q400)型機の特別塗装機で、全部で3機が7年3カ月にわたり緑色の塗装で運航し、終了後は通常塗装で復帰している。
担当者によると、グリーンジェットとエコボンに直接のつながりはないが、環境をテーマにした機体を検討する際に、エコボンのような機体をもう一度飛ばしたいという意見が出たという。
*写真は12枚。
関連リンク
ANA Green Jet
全日本空輸
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