ピーチ・アビエーション(APJ/MM)が運航する機材のうち、2019年に統合したバニラエアの黄色い塗装を唯一まとった特別塗装機(エアバスA320型機、登録記号JA08VA)が、リース会社へ返却されるため10月に姿を消す。
バニラが運航していた15機のA320のうち、12機がピーチ仕様のコックピットや客室に改修する対象になった。改修機は外観もピーチ塗装になったが、なぜ1機だけバニラ塗装のままになったのか。改めて経緯をまとめた。
—記事の概要—
・コロナでバニラ塗装のまま帰国
・元バニラ社員がデザイン
コロナでバニラ塗装のまま帰国
バニラエアは、持株会社化前の全日本空輸(ANA/NH)がマレーシアのエアアジア(AXM/AK)との合弁で立ち上げたLCCのエアアジア・ジャパン(第1期)が前身で、ANAホールディングス(ANAHD、9202)が100%出資するLCCだった。2019年11月に、同じくANAHD傘下のLCCであるピーチと統合。ピーチはバニラが保有していた15機のA320のうち12機を引き継ぎ、客室やコックピットなどをピーチ仕様に改修した。
JA08VAはバニラの8号機で、2015年2月7日に仏トゥールーズで引き渡され、同月10日に成田空港に到着した機体。バニラ機では初めて灯火類がすべてLEDになった。エンジンはピーチ機と同じくCFMインターナショナル社製CFM56を採用し、燃費を向上させる翼端の「シャークレット」は納入時から装備している。
改修前最後の商業運航は、バニラとしての運航最終日となった2019年10月26日の台北発成田行きJW100便。同年11月29日にピーチ仕様への改修のため成田から離日し、マレーシアのクアラルンプールにあるエアバス・グループ系の整備会社で改修が進められた。
クアラルンプールでの作業後は、2020年1月10日に仏トゥールーズへ向かい、同年12月11日にバニラ塗装のまま関西空港へ到着。機体は改修時にいったんエアバスのものになったため、フランス国籍機として関空へ戻り、12月17日にJA08VAで再登録された。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、塗装作業を日本で行うことになったためで、本来であれば外観はピーチ塗装、登録記号もJA08VAで関空へ到着するはずだった。
バニラ塗装で関空へ戻ったJA08VAは、胴体前方のロゴは消され、垂直尾翼は一部が白く塗装されていたが、ほとんどの部分は黄色のバニラ塗装のままだった。到着した機体を見たファンからは、バニラのデザインのまま運航を希望する声がピーチに多く寄せられたという。
元バニラ社員がデザイン
JA08VAは、2021年3月5日にバニラ塗装のまま運航に復帰。バニラがLCCとして初就航した奄美大島をイメージしたデザインを機体に施したことから、初便は関西発奄美行きMM205便が選ばれた。
元バニラのピーチ社員が機体のデザインを考え、左側にアマミノクロウサギや大島紬など奄美大島をイメージしたイラスト、後方は左右ともバニラのデザインを残し、前方右側はピーチの通常デザインを踏襲した。
座席数は改修前と同じ1クラス180席。シートは伊ジェベン製のままだが、アームレスト(ひじ掛け)を除き、カラーリングをピーチのものに変更し、カーペットやカーテンもピーチカラーになった。最前列席の前や最後列席の後ろにある壁も、ピーチ仕様に揃えたコックピットのアビオニクスも、ピーチ仕様に統一している。
コロナで運命が変わったJA08VAは、10月11日の水際対策緩和が目前に迫る6日ごろ姿を消す見通し。ピーチでは退役を記念し、フライトタグ「Farewell JA08VA」(税込900円)の販売を9月28日からオンラインショップ「PEACH SHOP online」で始めた。10月1日からは機内販売も予定している。
関連リンク
PEACH SHOP ONLINE
ピーチ・アビエーション
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