岸田文雄首相は現地時間9月22日(日本時間同日夜)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の水際対策を10月11日から緩和し、1日あたりの入国者数の上限を撤廃すると訪問先のニューヨークで発表した。個人旅行の解禁と短期訪日時のビザ免除も同日から実施する。また、観光支援策として「全国旅行割」を11日から始め、インバウンド獲得やコロナで打撃を受けた観光業の復興を目指す。
新型コロナの感染拡大により、各国では入国者数の制限が実施されたが、G7(先進7カ国)でコロナ対策として現在も実施しているのは日本のみで、1日あたり5万人を上限にしている。国内の航空会社だけではなく、IATA(国際航空運送協会)も、入国制限を含む水際対策の早期見直しを強く求めていた。
日本航空(JAL/JL、9201)は22日、「外国人観光客の入国が本格的に再開されることになる。当社としてもしっかり準備してお客様をお迎えし、日本経済の活性化に貢献したい」とのコメントを発表。「Go To トラベル」に代わる全国旅行割の発表を受け、23日に「国内はビジネス需要に比べ、観光需要の戻りは遅れており、今後飛行機を利用する観光のきっかけになることを期待したい」とコメントした。
JALの赤坂祐二社長は、国内の観光需要回復の遅れと今年の旅客動向について、「いわゆる“GoTo待ち”があるのかもしれない」との見方を2021年12月に示していた(関連記事)。
全日本空輸(ANA/NH)の井上慎一社長は23日、「インバウンドはコロナ前に5兆円の消費があり経済効果が大きい。外国人にとって現在の円安は大きな魅力で、水際の緩和により、訪日が促進される」と期待感を示し、全国旅行割については「世代を超えて皆さんが心待ちにされていた。日本全国で地域経済が活性化することを確信している」と述べた。
両社とも、水際対策の緩和が発表されるごとに国際線の予約が日本発、海外発とも発表前の週と比べて1.5倍から2倍程度の伸びを示しているといい、全国旅行割の実施で国内観光を含めた回復につなげる。
水際対策
・政府の水際対策、10月以降さらに緩和へ 岸田首相が意向(22年9月22日)
・水際緩和、入国は早くなったのか バンコク→羽田で検証(22年9月15日)
・入国時の陰性証明不要に、水際緩和スタート JAL国際線は予約順調(22年9月7日)
・入国者数、5万人に9/7引き上げ 添乗員なしツアー可に(22年8月31日)
・入国時の陰性証明、ワクチン3回目接種で免除 9/7から(22年8月25日)
・短期の海外渡航、国内の陰性証明も有効 厚労省が見直し(22年8月15日)
IATA
・IATAウォルシュ事務総長、日本の入国制限「科学に基づいたものではない」緩和求める(22年6月22日)
本邦航空会社
・ピーチ森CEO「飛ぶ意思表示しないと動いてくれない」高収益路線に注力(22年8月29日)
・ピーチ森CEO「訪日客のビザ見直しを」訪日回復で課題(22年7月29日)
・ANA、7月は単月黒字に 芝田HD社長「入国規制G7並みに緩和を」(22年7月7日)
・JALレゲット氏に聞く国際線戦略 特集・IATA第78回AGM 日系航空会社インタビュー(前編)(22年6月29日)