神戸市の久元喜造市長は9月20日、神戸空港を発着する国際線定期便が早ければ2030年前後から就航する考えを示した。関西3空港が果たす役割を自治体や国土交通省航空局(JCAB)、地元財界などが議論する「関西3空港懇談会」が、神戸の国際線定期便就航について18日に合意したことを受けたもので、関西空港の発着回数が年間30万回を超える場合、補完する役割を神戸が担えるようになった。
一方で、関空の国際線容量を超える需要を見込めることが、神戸の国際線定期便就航を実現する上で前提となることが明確になった。
—記事の概要—
・国際チャーターと定期便は別
・前提は関空の国際線容量超え
国際チャーターと定期便は別
国内97空港のうち、伊丹と神戸の2空港は国際線の乗り入れが禁止されていたが、18日の3空港懇の合意で神戸も国際線が就航できるようになった。また、2025年に開催される大阪・関西万博では、関空の国際線を補完する形で国際チャーター便の乗り入れを認める。
関西3空港は現在、関空が国際線と国内線、伊丹と神戸が国内線と役割を分担しており、神戸にはCIQ(税関・入管・検疫)施設がない。このため、久元市長は神戸空港の新ターミナルを2025年までに整備する考えを示した。関係者によると、建設費用を市がどの程度負担するかなどの詳細は「現時点では白紙の状態」だという。
国際線就航の解禁後も、運用時間は午前7時から午後11時までの現状を維持。1日当たりの発着回数は国内線80回を2025年には120回に拡大し、国際線は最大40回(20往復40便相当)の計最大160回とし、国際線の発着回数は需要を見て決定する。
万博開催に合わせた神戸への国際チャーター便乗り入れと、国際線の定期便就航は別の検討課題だ。定期便就航が実現するまでには、コロナで激減した関空の国際線需要の回復、関空の発着回数拡大、関空の年間発着回数30万回を超える需要が見込まれるといった条件を、順を追ってクリアする必要がある。
前提は関空の国際線容量超え
関西空港を運営する関西エアポート(KAP)などが設置している将来需要の調査委員会(委員長:加藤一誠・慶応大教授)は8月3日に、万博が開かれる2025年度の需要予測と2030年度の見通しを発表。予測によると、2030年度に関空の発着回数が30万回に迫るケースは、インバウンドが年間6000万人に達する「上位ケース」の29.7万回で、コロナ前である2018年度の19.0万回と比べて1.6倍(56.3%増)の数字となる。「中位ケース」は27.9万回、「基本ケース」は25.3万回だった(関連記事)。
このため、神戸発着の国際線定期便が実現するためには、この関空の発着回数30万回を上回る需要が見込める必要がある。インバウンドが年間6000万人を超える見通しが立ったタイミングで、関西3空港の役割分担の一環として、関空の国際線を補完する形で検討される。
神戸空港は2006年2月16日に開港し、2018年4月1日に民営化された。神戸市に所有権を残したまま運営権を売却する「コンセッション方式」で関西エアポート神戸が運営しており、同社は関空と伊丹を運営するKAPの100%子会社。累計搭乗者数は2021年12月15日に4000万人を突破し、2021年度の旅客数は前年度比44%増(19年度比47%減)の175万2746人。発着回数は29%増(8%減)の3万43回だった。
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