エアライン, 機体, 空港, 解説・コラム — 2022年9月14日 08:55 JST

HAC、衛星使う新着陸方式「LPV」運用開始 国内初、悪天候時の就航率向上

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 日本航空(JAL/JL、9201)グループの北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)は、拠点の丘珠空港(札幌市)など4空港へ着陸時に、衛星を活用する新進入方式「LPV」の運用を9月8日から始めた。離島などILS(計器着陸装置)の整備が難しい空港でも、悪天候による視界不良時に、就航率がこれまでより3割程度改善できる見込みで、14日に正式発表する。

LPV進入方式を導入したHAC=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 対象はHACが就航する7空港(北海道6、青森県1)のうち、丘珠と釧路、奥尻、利尻の4空港。LPV(Localizer Performance with Vertical guidance)進入方式は衛星を使用するもので、GPS(全地球測位システム)とSBAS(エスバス:衛星航法補強システム)から送られる位置補正データを活用し、航空機が着陸時に進入方向と降下角度のガイダンスを受けながら滑走路へ進入する。海外ではすでに米国などで実用化されており、従来より低い高度まで降下してから着陸の可否を判断できるようになるため、視界不良時に着陸できる可能性が高まる。

 国土交通省航空局(JCAB)によると、一つのシステムで日本全国をカバーでき、気温の影響を受けないため、高気温、低気温時も降下パスが一定であるなどのメリットがあるという。

 HACによると、奥尻空港の滑走路に西北西側(RWY13)から進入する場合、従来の方式では視界不良時に滑走路が視認できない際に対地高度380フィート(約116メートル)までしか進入できなかったが、LPV進入であれば約30%低い257フィート(78メートル)まで進入できる。

 HACが運航する機材は仏ATR社製ターボプロップ機ATR42-600型機が3機で、2020年4月12日から運航を開始。導入に向けた社内の議論で、ILSが設置されていない離島などの就航率向上にLPV進入を取り入れることが有効との結論に至り、LPV進入に必要なオプション装備も含めて機体を発注した。

 JCABは、LPV進入が可能な航空機が就航していて、導入効果の高い空港からルール設定を今年6月から始め、HACは国内の航空会社では初めて許可を取得した。2025年以降はSBASの配信サービスを提供する準天頂衛星「みちびき」の運用機数が増えることで、「LPV200」と呼ばれる200フィートまで進入できるモードの実用化が見込まれており、ILSの「CAT I(カテゴリーI)」相当の運用が可能になる。

 今回導入した4空港は、釧路を除くとILSが設置されていない。釧路は滑走路片側の進入方向には「CAT IIIB(カテゴリーIIIB)」のILSが設置されているものの、釧路は両方向の精密進入ができない状態だった。

 HACでは、衛星の打ち上げ状況などに合わせて、対象空港の拡大も検討していく。

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