航空機エンジン部品を手掛ける栃木県足利市のAeroEdge(エアロエッジ)に、納入先である航空機用装備品大手の仏サフランから「サプライヤー・パフォーマンス・アワード」が贈られ、8月30日に市内でセレモニーが開かれた。サフランが直接取引のある世界約2000社のうち、1年間でもっとも品質などが優れた企業数社に贈られるもので、2021年を対象とした今年の賞はエアロエッジを含む5社が世界から選ばれた。
—記事の概要—
・サフラン初の日本委託先
・仙台空港が物流支援
サフラン初の日本委託先
エアロエッジは、菊地歯車(足利市)から2015年9月に独立。サフランと米GEの合弁会社であるCFM製エンジン「LEAP」向けにチタンアルミ製低圧タービンブレードを納入している。LEAPはエアバスA320neoファミリー向けに「LEAP-1A」、ボーイング737 MAXファミリー向けに「LEAP-1B」が製造されており、エアロエッジの低圧タービンブレードは世界シェア1位と2位の小型機のエンジンに使われている。
サフランはLEAPの開発にあたり、チタンアルミ製タービンブレードを8つの新技術の一つとして取り入れたが、同社初のものであったことからサプライヤー選びが難航。菊地歯車が国内大手重工とチタンアルミ加工の取引実績があったことからサプライヤー選定に参加し、同社だけが期限内にサフランの要求水準を満たす試作品を完成できたことから、2013年11月に長期契約が結ばれ、量産体制を確立するために菊地歯車から2015年9月に独立した。
サフランがエンジン部品を日本企業に発注したのは初めてで、現在も量産部品を発注しているのはエアロエッジのみだという。
サフラン・エアクラフト・エンジンズのシニア・バイスプレジデントのクロード・キュリアン氏は「最初のころは容易ではなかったが、私たちは非常に成功したパートナーシップと言えるだろう。私たちは、とても、とても大きな成功を収めた」とたたえた。
エアロエッジの森西淳社長は「契約時にこの賞の存在を知り、いつか受賞したいと考えていたが、社員が本当に必死になって頑張ってくれたことで、グローバルな評価につながった」と語った。
エアロエッジの従業員は約120人。株主として菊地歯車のほか、豊田通商(8015)、日本政策投資銀行(DBJ)、DMG森精機(6141)、福岡キャピタルパートナーズ、足利銀行、めぶき地域創生投資事業有限責任組合、三菱HCキャピタル(8593)、JA三井リースが出資しており、経済産業省も航空機向けビジネスを後押ししている。
仙台空港が物流支援
LEAPエンジンを採用した機体を日本で初導入したのは、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)で、LEAP-1Aを搭載するA320neoを2020年10月25日に就航させた。国内のLCCがA320neoを運航するのも初めてで、初日は関西空港から札幌(新千歳)へ運航後、札幌発仙台行きに導入した。
エアロエッジのLEAP向けタービンブレードの原材料輸入と完成品輸出、検品・在庫管理などは、仙台空港を運営する仙台国際空港会社が支援している。就航初日にはエアロエッジの社員が仙台空港を訪れ、A320neoの到着を出迎えた。
ピーチの森健明CEO(最高経営責任者)は、「LEAPはとても静かで燃費が良く、選定はまったく躊躇(ちゅうちょ)しなかった。仙台に社員の方が大勢来てくださったので、(札幌発便の)キャプテンが非常に感激していた。他人がやっていないことをやるのはピーチと同じだ」とエールを送った。
空港会社の鳥羽明門(あきと)社長は、「私も(ピーチのA320neoを)出迎えたが本当に静かだった。仙台空港としては騒音に気をつけなければならないので、LEAPエンジンにはもっと仙台に来て欲しい」と話していた。
森西社長は「仙台空港のリソースを使うことで、私たちが休みの間にも作業してくれるのは魅力的」と仙台との協業を説明。「これがゴールではないので、連続受賞を目指したい」(森西社長)と意気込みを語った。