企業, 空港 — 2022年8月29日 23:57 JST

AGP、バッテリーGPUで航空機に電力供給 ディーゼル置き換えCO2削減

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 空港インフラを手掛けるエージーピー(AGP、9377)は8月29日、駐機中の航空機へバッテリーから電力供給する「バッテリー駆動式GPU」の試作機を成田空港で報道関係者に公開した。現在はディーゼルエンジンで発電しているが、バッテリーに置き換えることで排気ガスや騒音が発生しなくなり、空港でのCO2(二酸化炭素)排出量や環境負荷の抑制につなげる。小型機のボーイング737型機とエアバスA320型機や、これより小さいリージョナルジェットでの利用を主に想定しており、早ければ2024年の実用化を目指す。

成田空港で公開されたAGPのバッテリー駆動GPUの試作機=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
ディーゼルエンジンGPUから置き換え
CHAdeMOで充電
24年実用化視野

ディーゼルエンジンGPUから置き換え

 運航中の航空機は、電力や機内の冷暖房をエンジンから供給しているが、空港に駐機中はエンジンを止めるため、機体の尾部にある小型エンジン「APU(補助動力装置)」が供給源になる。

AGPのバッテリー駆動GPUから電源を供給されて開くボーイング767の貨物ドア=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 しかし、APUも通常のエンジンと同じくジェット燃料を使うため環境負荷が高い。このため、羽田や成田など主要空港のうち、PBB(搭乗橋)を備えるスポット(駐機場)には、航空機用115V/400Hzに変換して供給する電力変換装置が設置され、地下には空調用配管が埋設されており、これらを総称して「固定式GPU(地上動力設備)」と呼ばれている。

 今回お披露目したバッテリー駆動式GPUは自社開発。PBBのない「オープンスポット」や地方空港など、固定式GPUのないスポットで航空機に電力を供給している「ディーゼルエンジン駆動式」の移動式GPUの置き換えを想定。東芝製のリチウムイオンバッテリーを採用し、65分のフル充電で737やA320に60分(1時間)から90分(1時間半)程度供給できるという。

 エンジンもAPUも動いていない状態だと、航空機は電動の貨物ドアなどを開けることもできず、空港でAPUを使わない場合はGPUから電力を確保する必要がある。

AGPのディーゼルエンジン駆動GPU=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CHAdeMOで充電

 バッテリー駆動式GPUの大きさは、長さ2745mm×幅1480mm×高さ1620mmで、重さは2.2トン。電動アシスト機能を搭載し、作業者1人でも動かすことができる。また、輸送コストの問題はあるものの、空輸も可能だという。

電動アシスト機能により一人で移動可能なAGPのバッテリー駆動GPUの試作機=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港でバッテリー駆動GPUを披露するAGPの大貫哲也社長=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 充電器は、電気自動車(EV)の急速充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」を採用。バッテリー駆動式GPUだけでなく、空港内で導入が進むEVも充電できるようにした。成田では第3ターミナル側に1カ所用意し、A320や737を運航しているLCC(低コスト航空会社)に、バッテリー駆動式GPUの利用を働きかけていく。AGPによると、成田は全体の約3割がオープンスポットだという。

 AGPの大貫哲也社長によると、固定式GPUを使うと駐機中のCO2排出量をAPUと比べて平均で約1/10に抑えられ、APUを停止することで駐機中の騒音を低減でき、ジェット燃料の節約で航空会社の運航コスト削減につながるという。

24年実用化視野

 「空港のCO2削減に挑戦する会社と位置づけて挑んでいる」と話す大貫社長は、「1年くらい試験し、2024年には実用化したいが、半導体調達が課題だ」という。

成田空港で公開されたAGPのバッテリー駆動GPUの試作機=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

電源を立ち上げたAGPのバッテリー駆動GPUの試作機=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 AGPは羽田と成田のほか、新千歳、伊丹、関西、神戸、中部、広島、福岡、那覇の10空港でGPUを使う「動力供給事業」を展開。バッテリー駆動式GPUの開発拠点である成田以外に、寒冷地の新千歳など、さまざま気象条件の空港でも実証実験を実施し、運用を評価していく。

 AGPでは、自社で10空港に配備しているディーゼルエンジンの移動式GPUの置き換えだけでなく、移動式GPUを保有する航空会社などにも提案していく。大貫社長は「すでに運用している空港で(空調用の)埋設管の設置は難しく、投資負担も多大になる。日本の空港のCO2削減のソリューションとして使っていただけるのではないか」と語った。

 AGPは1965年12月設立。主要株主の出資比率は、筆頭株主の日本航空(JAL/JL、9201)が33.3%、羽田空港のターミナルなどを手掛ける日本空港ビルデング(9706)が26.8%、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が20.0%となっている。

*写真は11枚。

AGPのバッテリー駆動GPUの試作機=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

AGPのバッテリー駆動GPUの試作機=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

AGPのバッテリー駆動GPUの試作機=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港でバッテリー駆動GPUを紹介するAGPの大貫哲也社長ら=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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エージーピー

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