3年ぶりに行動制限のない夏休みを迎えた日本。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で航空会社は大きな痛手を被ったが、コロナ後を見据えると新人の採用を続ける必要があった職種がパイロットと整備士だ。ともに一人前になるには10年以上かかると言われ、将来的な人手不足を避けるためには過度に大きな採用の山と谷ができることを避けたいのが、航空会社の本音と言える。
日本航空(JAL/JL、9201)が100%出資する整備子会社JALエンジニアリング(JALEC)も、厳しい経営環境の中で新人整備士の採用を続けている。JALECは、JAL本体の整備部門とJAL系整備会社を統合する形で2009年10月1日発足。2013年からは、整備の基礎技術を競う「技能五輪」を開き、技術やコミュニケーション能力の向上を進めてきた。
これまではベテランも参加していた技能五輪だが、今年は60人の新人だけで開催。今年度に入社した新人の教育と訓練の場として7月27日と28日の2日間にわたり開かれ、JALECから46人、鹿児島空港を拠点とするグループの日本エアコミューター(JAC/JC)から8人、天草エアライン(AHX/MZ)から1人が参加したほか、地上研修で整備部門に配属されたJALのパイロット訓練生5人も技能五輪に挑んだ。
「セイフティーワイヤーがけ」「15種類のフルード当て」「ツールチェック」「間違い探し」など、5種類の競技に1チーム6人、5チーム対抗で挑み、団体に加えて個人でも競った。廃棄品を活用した教育用エンジン部品を使ったセイフティーワイヤー(安全線)がけでは、本番を想定して安全や品質を意識して作業できるかなどが評価のポイントになり、潤滑油や作動油、除氷液など15種類の液体名を当てたり、素早く正確にツールボックス(道具箱)を確認できるか、教育用に用意している実際の部品や整備書類のサンプルに仕込まれた間違いなどを指摘できるかなどを競った。
出場した中尾好宏さんは「1カ月前に実習でやったものなどは、しばらくやっていないのと時間制限があったので結構難しかったです」と話す。今回は60人のうち12人が女性で、須藤彩良さんは「フルードはたくさん並んでいると見分けがつかなかったり、粘度指数で言われてもピンとこないのは、まだ経験不足なのかなと思いました」といい、「間違い探しは、見て違和感に気づくことが大事だと思いました」と、経験を積むことの大切さを実感していた。
パイロット訓練生の石井亮多さんは、大学で素材などを研究しており、整備部門に初期配属された5人は全員が理系出身だという。「大学で習った知識が生かせるものもありますが、機具の取り扱いのように一切やったことがないものは、友だちに助けてもらいました」とチームワークの大切さに触れた。須藤さんも「一つひとつが複雑なシステムもあり、自分一人の知識では追いつかないところを仲間に聞いたり、一人では危ない作業もあるのでチームワークは大事です」と指摘していた。
今回の技能五輪を企画した根本雄太さんは、2008年に入社以来エンジンの試運転に携わり、2016年開催の技能五輪に出場していた。「訓練で学んだことの集大成としての基礎固めです。基礎があれば試運転でも何でもできるので、整備作業の根っこです」と、競技種目の狙いを話す。新人たちの動きを見ていて「座学では見えなかった一面も見られました」といい、現場に近い雰囲気の中で、コミュニケーション力などに磨きをかけてもらうことも重要だという。
JALECによると、一人前の整備士になるまでには、15年近くかかるケースが多いという。仲間と安全に作業することを新人時代から体感してもらうことが、整備のスキルを高めていく上で重要だと言えるだろう。
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