ボーイングは8月1日、日本国内に研究開発センターを開設したと発表した。代替航空燃料「SAF(持続可能な航空燃料)」や航空機の電動化、水素利用、ロボティクス、自動化、バッテリー、炭素繊維複合材などの研究開発を進めるもので、名古屋を主要拠点とする形で開設し、エンジニアなどを日本で採用する。これに伴い、経済産業省と締結している航空機に関する技術協力の範囲を拡大した。
ボーイングは、2019年に経産省と航空機の技術協力で合意。1日は、SAFと電気・水素パワートレイン技術、気候への影響ゼロの航空を促進する将来の飛行コンセプトに焦点を当てることで新たに合意した。
また、国産SAFの商用化などを目指す日揮や全日本空輸(ANA/NH)、日本航空(JAL/JL、9201)などが設立した有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」への参画も表明した。
ボーイングのチーフ・エンジニアで、エグゼクティブ・バイス・プレジデントのグレッグ・ハイスロップ氏は「SAFや先進的な製造業に注力するため、研究センターに人を集め始めている。非常に難しい問題を解決するために必要なのは、人材の活用だと考えている。まずは名古屋からスタートし、最終的には東京に拠点を移す予定だ」と語った。
ボーイングによると、1日付で研究開発センターを組織として正式に立ち上げた。センター設立に向け、すでに名古屋で16人、東京でも数人のスタッフを採用しており、今後は50人程度の体制を目指すという。現在のセンターは、ボーイングが名古屋市内に置くオフィス内を主要拠点としているが、2023年後半から第4四半期(10-12月期)にかけて独立した施設を確保し、2023年内に移転することを検討していく。
SAFについては、787の主要部位を日本などから米国の最終組立工場へ運ぶ747-400LCF「ドリームリフター(Dreamlifter)」の運航にも使用を予定している。SAFは現在、商業フライトで従来のジェット燃料と50対50の割合で混合することが認められており、将来的にはドリームリフターを100%のSAFで運航することを目指す。
また、ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)、JALの2社とは、持続可能な航空技術の研究を推進していくことで、各社とボーイングが覚書を結んだ。航空機からのCO2(二酸化炭素)排出量を削減を目指し、電動・ハイブリッド・水素など新しい動力による推進システムの研究協力を進める。
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ボーイング・ジャパン
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