全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の芝田浩二社長は7月7日、7月単月の営業損益が黒字になるとの見通しを示した。日本航空(JAL/JL、9201)も7月はEBIT(利払い・税引き前損益)が単月黒字となる見込みで、大手2社とも国内線の旅客需要が堅調に回復し、国際線旅客も計画より上振れしていることが要因と分析している。
一方で、芝田社長は、「海外のお客さまから日本に行きたいがビザの取得が煩雑、団体ではなく個人で行きたい、という声を多くいただいている。入国規制をG7(先進7カ国)と同じレベルまで緩和していただきたい」と、訪日需要拡大の足かせとなっている水際対策の緩和を求めた。現在訪日客はツアー客のみ認められており、入国にはビザが必要なため、本人が領事館に出向く必要がある。
都内で会見を開いた芝田社長は「今月は単月黒字を達成する見込みで、今年度は確実に黒字化を達成していく」と述べた。7-8月の国内線旅客は「ANAブランドとピーチブランドを合わせて、コロナ前との比較で旅客数は9割まで回復してきている。来週末の海の日の3連休は、コロナ前の同水準まで回復している」と、傘下のLCCであるピーチ・アビエーション(APJ/MM)と合わせて回復していると説明した。
ANAによると、ANA単体では第2四半期(7-9月期)がコロナ前の8割、第3四半期と第4四半期は各9割の水準を見込んでいるという。
国際線について芝田社長は、「第1四半期は計画より上振れており、7-8月も上振れ予想だ」と述べた上で、今後の回復は水際対策を欧米と同水準まで回復することが不可欠との見方を示した。6月にカタールのドーハで開かれたIATA(国際航空運送協会)の年次総会(AGM)でも、ウィリー・ウォルシュ事務総長が日本の水際対策について、「科学に基づいたものではなく、ほとんど効果がない割に膨大なコストがかかる」と否定的な見解を示した(関連記事)。
また、ANAグループ社員4万2000人のうちグループに出向した人は累計2300人になったという。「現時点で約700人がグループ外へ出向しているが、今後700人も運航規模回復、拡大に合わせて職場に復帰する」と語った。
円安や燃油高については「為替も原油も一定程度ヘッジはしている。足もとで特段大きな影響はないが、長引くと円安、原油高の影響は出てくる。円安は訪日需要を喚起し、我々にとってもプラスになる。(北米-アジア間など国際線と国際線の)乗り継ぎ需要などの海外発券も外貨収入なので、円に換算するとメリットになる。一方で、航空機購入などドル払いはデメリットになる。原油高は燃油サーチャージに転嫁されるので、日本の旅客が国外に出るモチベーションには随分影響し、マイナスだと思う」と語った。
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全日本空輸
IATA
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