福岡空港を運営する福岡国際空港会社(FIAC)は5月20日、国際線旅客ターミナルの増改築工事の起工式を開いた。東アジアでトップクラスの国際空港を目指し、年間1600万人の国際線旅客を受け入れられるよう、ターミナル北側の増築で床面積を倍増させ、国内線ターミナルと結ぶ連絡バス専用道路の整備などを進める。増築部分の開業は建設中の第2滑走路が供用開始となる2025年3月末、改修部分の完成は同年11月を目指す。
—記事の概要—
・面積2倍で混雑緩和
・第2滑走路と同時期開業
面積2倍で混雑緩和
増改築工事では、ターミナルの床面積を現在の約7万3000平方メートルからおよそ2倍の約13万6000平方メートルに拡張。ターミナル北側を増築し、出発・到着機能の強化と免税店エリアを現在の約4倍に拡充するとともに、北側コンコースを延伸することでPBB(搭乗橋)を現在の6基を2倍の12基に増やす。
既存施設の改修により、自動手荷物預け機を6台新設し、保安検査場の検査レーンを現在の6レーンから最大11レーンに拡充することで出発手続き時間を短縮する。到着エリアでは手荷物受取所のベルトコンベアを現在の4基から8基に倍増させる。
免税店エリアも拡充。現在の約1500平方メートルを4倍の約6000平方メートルに広げ、ウォークスルー型を取り入れるとともに、フードコートを併設する。
また、アクセスホールを整備し、到着ロビーの増床やバス・タクシーなどの二次交通機能を集約することで利便性を向上させる。国内線ターミナルへの連絡バスも専用道路を整備し、国際線から国内線に乗り継ぐ際の移動時間を現在の15分を5分に短縮する。
駐車場も既存のものを立体化して現在の897台からおよそ1.4倍の約1300台に拡大。1300台のうち、立体駐車場は954台になる。
FIACの永竿哲哉社長は、「2018年度には国際線旅客が690万人に達し、出発・到着機能や店舗サービスの不足など施設の狭隘(きょうあい)化が課題となっていた。ターミナルビルの面積を現在の約2倍に拡張し、混雑が常態化していた出発ロビーに自動手荷物預け機を新設し、保安検査場を拡張するなど、スムーズかつ快適な設備を整備する」とあいさつした。
第2滑走路と同時期開業
現在の国際線ターミナルは1999年に供用開始。当時は250万人程度の旅客数だったが2012年度に300万人を超え、コロナ前の2018年度には690万人に達した。バスラウンジの新設やチェックインカウンターの増設などを行ったが手狭になり、出発・到着機能の強化や店舗サービスの拡充などが課題となっていた。
増改築工事の設計・監理は梓設計・HOK・西日本技術開発共同企業体で、施工は大成建設・旭工務店特定建設工事共同企業体が担う。
福岡空港は2019年4月1日に民営化。30年後の2048年度までに路線数をおよそ2倍の100路線に増やす目標を掲げ、東アジアでトップの空港を目指している。事業期間は2048年7月31日までの30年間で、国に所有権を残したまま運営権を売却する「コンセッション方式」で民営化され、FIACは滑走路やターミナルビル、貨物ビル、駐車場などを一体的に運営する。
国は2500メートルの「増設滑走路」と呼ぶ第2滑走路の建設を進めており、2025年3月末の供用開始を予定している。
IATA(国際航空運送協会)の予測などでは、国際線ターミナルの増改築部分が完成する2025年には、国際線旅客の水準がコロナ前の水準に戻るとみられる。永竿社長は「コロナ前の便数に回復していただきたい。生活は変わったかもしれないが、ビジネスでもリモートではやりにくい面も実感したのではないか」と述べ、企業がビデオ会議と出張など対面する会議を併用する形に移行していくとの見方を示した。
コロナ前は福岡空港へ中国や台湾、韓国などの近隣諸国や東南アジアから国際線が乗り入れていた。今後の国際線誘致については、「コロナ前と比べて何かが変わるわけではないが、できれば早く復便していただきたい。それぞれの国や空港からできればデイリー(毎日運航)でアクセス可能になり、FSC(フルサービス航空会社)からLCC(低コスト航空会社)まで多様なエアラインに飛んでいただき、東アジアで選ばれる空港になれば非常にありがたい」と語った。
*写真6枚とパース8枚。
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