日本航空(JAL/JL、9201)は4月5日、客室乗務員が出身地など全国各地に移住し、地域の魅力を発信する「ふるさとアンバサダー」のオリエンテーションを開いた。これまでは18人が札幌や福岡など10地域で活動していたが、今年度は21人が17地域に着任する。
—記事の概要—
・「奄美群島を機内と捉えて島々回る」
・マニュアルなく自由な発想で
・活動費分は収益化
「奄美群島を機内と捉えて島々回る」
ふるさとアンバサダーは社内公募で、2020年8月にスタート。地域活性化に関わりたい客室乗務員が出身地やゆかりのある地域に移住し、新たな特産品の開発や魅力発信、地域の課題開発に取り組んできた。
活動を始めた2020年8月の時点では札幌3人と福岡2人の計5人で、10月に仙台と高松に2人ずつ加わった。今年3月末の時点で、札幌、釧路、青森、仙台、名古屋、大阪、高松、広島、福岡、宮崎の10地域に18人が着任。4月からは帯広、函館、新潟、京都、松山、大分、熊本、奄美が加わる一方、釧路の配置がなくなり17地域となり、21人で活動していく。
4月から加わった8人の新任アンバサダーは、函館、新潟、名古屋、広島、松山、大分、熊本、奄美に着任する。
名古屋で活動する若杉直子さんは、これまで地域に移住せず乗務と並行して活動する「ふるさと応援隊」として愛知県で活動していた。「いろいろな地域の課題や魅力を応援隊の活動で再確認した反面、自身の企画力のなさが課題と感じた」と話し、自らも成長しながら活動していきたいという。
奄美に着任する持木絹代さんは、「出身は関東だがプライベートで訪れて、美しい自然と人々が共存している姿や、一人旅や移住者が多く、とても可能性にあふれた面白い島だと思った。機内ではお客さまの表情や雰囲気を感じながらサービスをしてきたが、離島が多い奄美群島を一つの機内と捉えて、自分の足で島々を回りながら課題や悩み、やりたいことを聞き取り、自分自身が楽しみながら私にできることを提案していきたい」と意気込みを語った。
マニュアルなく自由な発想で
また、オリエンテーションでは先輩アンバサダーが活動内容や心構えを新人たちに伝えた。札幌市出身で、第1期メンバーとして2020年8月から札幌で活動している谷口由紀さんは、「一過性のものに終わらせず、継続することが大事」と述べた。
「客室乗務員の仕事はマニュアルが定められているが、アンバサダーはマニュアルがない。マニュアルがないからこそ自由に発想して取り組める面白さがある。失敗を恐れず挑戦して欲しい」と谷口さんはエールを送った。
JALの執行役員で地域事業本部長を務める本田俊介氏は、新任アンバサダーたちに「情報だけでなく体験してみて、地域の方々の気持ちになって物事を考えないと(自分の中に)入ってこない。目と耳と心で感じていただきたい」とアプローチの仕方に触れた。
提案を実現していく上でのポイントとして、本田氏は「やろうと思うと必ず障害、壁がたくさんある。できない理由を並べるのではなく、どうやったらできるのか、という発想で物事を考えると少し前向きになれる」とアドバイスした。
活動費分は収益化
本田氏によると、地域関連の活動は全社で昨年1年間に1200件あったという。本田氏はふるさとアンバサダーのこれまでの活動について「やってきてわかったことは、地域に愛着を持つ人をどれだけ増やすかだ」と述べ、「永続的にやっていく仕組みをしっかり作っていく」と語った。
事業化については「固定費まではカバーできないが、自分たちの活動にかかった費用に対する収入は取れてきている。人流を増やしたり、地域の産品を6次産品化したり、輸出したりするビジネスモデルは、収益がどのくらい出るかが大体わかってきた。ただ金額が小さいので、規模感はこれからしっかり直していきたい」と述べた。
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