代替航空燃料「SAF(サフ)」の国産化を目指して日揮ホールディングス(1963)とレボインターナショナル(京都市)、全日本空輸(ANA/NH)、日本航空(JAL/JL、9201)は3月2日、有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」を設立した。国産SAFの商用化や普及、拡大に取り組む。
SAFはSustainable Aviation Fuelの略で「持続可能な航空燃料」を意味し、原料はバイオマスや廃食油、排ガスなど。航空機や給油設備など既存インフラをそのまま活用し、CO2(二酸化炭素)排出量を現在使用している化石由来の航空燃料と比べて大幅に削減できる。
国は2050年の脱炭素社会実現を目指しており、世界の航空業界は2030年に使用燃料の10%をSAFに移行する目標を掲げている。ACT FOR SKYを立ち上げた経緯として、単一原料や製造方法ではSAFの需要をまかなうことができないため生産体制を強化する必要があり、サプライチェーンの構築や認知度向上、エネルギーや航空業界とは異なる業界の協力が不可欠だとして設立に至った。
当初の参加企業は16社。「ACTメンバー」と呼ぶ事業として国産SAFに直接関わる企業など14社と、国産SAFのサプライチェーン構築に必要となる企業など「SKYメンバー」の2社でスタートし、日揮とレボ、ANA、JALの4社はACTメンバーの構成企業になる。
ANAの平子裕志社長は「3月2日を“サフの日”と命名したのでぜひ覚えて頂きたい。昨年10月にJALの赤坂社長とSAFに関する共同レポートを発表したが、航空輸送のCO2排出実質ゼロを実現するためには、SAFの国内生産と安定供給が極めて重要。経済安全保障の観点からも、SAFの安定供給は大きな意味を持ち、SAFの地産地消が理想的だ」と国産化の意義を語った。「2050年には、アジア圏のSAF市場は約22兆円規模になると試算している」(平子社長)として、国産SAFを日本の新たな輸出品に育てる意義を説いた。
JALの赤坂祐二社長は「コロナ前の日本でのジェット燃料の搭載量は1200-1300万キロリットルで、(2030年のSAF使用目標の)10%は120-130万キロリットル。東京ドームの体積に匹敵し、タンカー4隻分に当たるジェット燃料をSAFに置き換える必要がある。規模が大きければ大きいほど、SAFを起点に新しい社会を作っていく力になるのではないか」とオールジャパンで取り組む必要性を語った。
これまでの両社による取り組みとして、ANAは2021年10月に、SAFでCO2排出量削減に取り組む仕組み「SAF Flight Initiative(SAFフライトイニシアチブ)」を同社便を利用する企業と共同で立ち上げた。平子社長は「ESGに対する企業の取り組みを開示する姿勢が強くなっており、大きな関心を持っていただいている」として、企業側のニーズも聞きながらSAFへの理解を深めてもらい、協力を仰いでいくとした。
JALは2021年2月に、古着25万着から製造した国産SAFを使ったフライトを実施。国産SAFの実用化に向けた取り組みの一環で、SAF製造のノウハウを航空会社の立場で蓄積するのが主な目的だった。赤坂社長は「一番の目的は国内の技術だけでSAFを作れるかだったが作ることができた。子供たちが古着を集め、古着で飛行機を飛ばせたことの学びをACT FOR SKYにも生かしたい」と語った。
ACTメンバー(14社)
IHI、出光興産、伊藤忠商事、ENEOS、コスモ石油、全日本空輸、太陽石油、東洋エンジニアリング、日揮ホールディングス、日本航空、丸紅、三井物産、三菱重工業、レボインターナショナル
SKYメンバー(2社)
小田急電鉄、日清食品ホールディングス
関連リンク
SAF共同レポート(PDF)
全日本空輸
日本航空
ANAとJALで共同レポート
・ANAとJAL、代替燃料「SAF」普及へ共同レポート策定 2050年CO2排出実質ゼロへ(21年10月8日)
ANA
・ANA、企業参加型CO2削減プログラム始動 代替燃料「SAF」で排出量減(21年10月14日)
・ANA、バイオ燃料で定期便運航開始 CO2を9割削減(20年11月6日)
JAL
・JAL、古着から国産バイオ燃料 787で初運航(21年2月4日)