世界三大珍味の一つとして知られるキャビア。チョウザメのタマゴを塩漬けにしたもので、高級食材として流通している。一方で、チョウザメ自体は認知度が低く、食材として流通せずに廃棄されるケースが多いと言われている。
こうした中、宮崎空港に本社を置くソラシドエア(SNJ/6J)は、県産のチョウザメを首都圏に輸送する取り組みを2月21日から始めた。同社は「ソラチョク便」と名付けた集荷から航空輸送、納品までを自社で担い、当日中に届ける高速小口貨物輸送を2021年10月から展開しており、新鮮なチョウザメを直送することで食材としての認知度を高め、廃棄低減につなげる。
宮崎県では100億円事業を目指してキャビア生産が行われており、チョウザメの養殖は県が日本一。県産キャビアが2013年から販売されているものの、食べられずに廃棄されるチョウザメの身を消費につなげられないかと県内の関係者たちが考えた。この課題を解決していこうと、ソラシドがソラチョク便で事業連携しているいちご(2337)との取り組みで、宮崎県出身のミシュラン1つ星シェフを中心とした若手シェフによるメニュー試作会を都内で開いた。
会場は日本橋馬喰町のミシュラン1つ星レストラン「nôl(ノル)」。同店でディレクターを務める野田達也シェフをはじめ、宮崎出身で1つ星を獲得した料理人の秋田絢也さんら4人がチョウザメを使ったさまざまなメニューを披露した。
チョウザメはチョウザメ科に属する世界最大の淡水魚で、サメではない。サメと異なり腎臓があるためアンモニアを分解できるので臭みがないのが特徴だ。秋田シェフは「コラーゲンがすごく多い」と指摘し、今回の試作会にチョウザメを提供した宮崎市で活魚を扱う九州築地によると、ビタミンDやオメガ3脂肪酸、カルノシンといった栄養素を多く含むという。
秋田さんはカルパッチョやラビオリなど、野田さんは蒲焼きやセビーチェなどを披露。野田さんは「流通している高級魚よりもおいしいのかと言われると難しいとは思うが、スポットライトが当たっていない食材の価値を再認識していければ」と話し、新たな調理方法を編み出していけば、チョウザメの身とタマゴであるキャビアを無駄なく扱えるのではないかという。
九州築地の築地加代子代表は「キャビアがビジネス的には主軸であったとしても、その為に個チョウザメの体が犠牲になるような産業になっては本末転倒だと思う。先を走ってキャビア事業を確立してきた宮崎県は、その点でも何らかの見本でありたい」とのコメントを試作会に寄せた。
ソラチョク便はソラシドの新規事業で、鮮度を求められる県産食材を首都圏に輸送するといったニーズから取り込み始めている。保冷車を自社で保有するとコストがかかることや、運航しているボーイング737-800型機では貨物コンテナを搭載できないため、旭化成(3407)の青果輸送・保管システム「Fresh Logi(フレッシュロジ)」を活用。生鮮食品を密閉型の箱に入れ、温度や湿度などの外部環境の影響を防止するシステムで、従来は冷蔵が必要だった鮮度を保持したままの低温輸送が常温で可能になった。
新規事業室の池田明史室長は「宮崎以外の就航地からも引き合いがあるので、外食事業者とも連携していきたい」と語った。今後は生鮮品だけでなく、ご当地スイーツや弁当などもターゲットにしたいという。
*写真は18枚。
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