全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は2月10日、芝田浩二専務(64)が4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。片野坂真哉社長(66)は代表権のある会長に就き、伊東信一郎会長(71)は特別顧問に退く。事業会社のANAも、傘下のLCCであるピーチ・アビエーション(APJ/MM)創業時にCEO(最高経営責任者)を務めた井上慎一専務(63)が4月1日付で社長に昇格し、平子裕志社長(64)はANAHDの副会長に就任する。
芝田新社長は鹿児島県奄美群島の加計呂麻(かけろま)島出身。1982年3月に東京外国語大学外国語学部を卒業後、同年4月にANAへ入社。アライアンス室室長や欧州室長を歴任し、2013年4月1日の持ち株会社制移行時に発足したANAHDではアジア戦略部長やグループ経営戦略室長などに就いた。現在は専務取締役で、グループ経営戦略や広報・コーポレートブランド推進などを担当している。
12月で創業70周年の節目を迎える今年、持株会社ANAHDと事業会社ANAのトップが同時に交代する。
—記事の概要—
・口癖は「大丈夫だろう」
・22年度は最終黒字目指す
口癖は「大丈夫だろう」
片野坂社長は「ご覧の通り貫禄十分だが、アライアンス関連事業、欧州駐在を経験し、エピソードにも事欠かない。コロナ危機を乗り切る経営戦略を担当しており、今後はリーダーシップを発揮して世界のリーディングエアライングループを目指す経営ビジョンを実現してくれるものと確信している」と芝田新社長を紹介した。
「企業は持続的成長が第一だ。(コロナの影響で)小さな会社になって生き残り、雇用を守り、ポストコロナに向けてビジネスモデルを変えていく。創立70周年のタイミングだが、2022年度は確実に黒字化していけると判断した」と、社長交代のタイミングに触れた。
「『大丈夫だろう』が口癖で、2、3のデータや根拠を持ってきて『行けます』と。ある案件でも私が出した方針と違うことを言ってきて、それが非常になるほどと思い、私もそちらに乗っかった。コロナを戦う戦略も共有できており、安心して引き継げる」と、片野坂社長は芝田氏と考えが共有できていることを後継指名した理由に挙げた。
芝田氏は北京に留学経験もあり、「中国語も英語も堪能。最近では(仮想空間での旅行や買い物を手掛ける)ANA NEOや、(アバターロボットを手掛けるavatarin社の)アバターなど新事業を手掛けており、これからの時代にふさわしい」(片野坂社長)と、コロナ後の非航空系事業の強化も任せられる人選になったという。
22年度は最終黒字目指す
芝田氏が片野坂社長から後継指名されたのは、昨年の12月24日クリスマスイブ。「青天の霹靂、驚天動地だった。私自身が会社の発展、全従業員の幸福にいくばくか貢献できるかどうか、何度か自問自答し相応の覚悟ができた」(芝田氏)と語った。
ANAが中核となる航空事業については、入国制限で国際線の本格運航が難しい中、国内線の需要回復が鍵を握り、ANAHDとしては2022年度の黒字化を目指す。
「足もとの需要がなかなか読みづらいが、コスト削減が進んでいる。昨年の第3四半期くらいの国内旅客の回復が見込めれば、黒字の確信を持てるのではないか。特別利益なども一定程度期待しているので、最終黒字を目指したい」と新社長としての意気込みを述べた。
FSC(フルサービス航空会社)のANAとLCC(低コスト航空会社)のピーチの役割分担については、「ホールディングスの立場から、扇の要としてお互いの長所が十分発揮できるようなコーディネートができればいい。特段大きな路線変更は検討していない」と語った。
ANAとピーチに続く「第3ブランド」となる2022年度後半から2023年度前半に就航するとしていた中距離国際線LCCは「当初の予定より若干遅れると思う」と、国際線需要の回復期を見極める。「アジア・オセアニア路線で、リゾートに限定する必要はない」と、観光だけでなく海外出張需要の取り込みも目指す。
非航空系事業については、グループ会社ANA NEOが開発するスマートフォンを使ったバーチャル(仮想)空間での旅行や買い物などを楽しめるプラットフォーム「SKY WHALE(スカイホエール)」は「今夏のサービスローンチを目指し、最終的な開発を急いでいる。(アバターとスカイホエールの)2つの事業化が今年度あるいは来年度にもう少し深掘りされてくるだろう」との見通しを示した。
片野坂社長はトップ刷新の理由の一つとして、構造改革の加速を挙げた。「私なりに小さな火を付け、炎を点火したような感じ。これらをスピードを上げて実現して欲しい。競争するテーマが決まっているので、スピードを上げないと世界に負けてしまう。ビジネスプランのスピードを上げ、どんどん花を開かせて欲しい」(片野坂社長)と、黒字化を経てグローバルな競争に勝てる体制づくりに期待を寄せた。
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ANAグループ
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