ヤマトホールディングス(9064)と日本航空(JAL/JL、9201)は1月21日、貨物専用機の運航を2024年4月から始めると発表した。ヤマトHDが導入するエアバスA321ceo P2F型貨物機をJALグループのジェットスター・ジャパン(JJP/GK)が運航し、首都圏から北海道や九州、沖縄への長距離トラックによる宅急便輸送の一部を補完する。ヤマトが貨物機を導入するのは初めてで、国内の航空会社がA321P2Fを運航するのも初となる。
—記事の概要—
・ジェットスターがJAL便名で運航
・「確実な需要見込める」
*特集「なぜA321P2Fを選んだのか」はこちら。
ジェットスターがJAL便名で運航
ヤマトがA321P2Fを3機リース導入し、JALが50%出資するLCCのジェットスター・ジャパンが運航する。A321P2Fは中古のA321ceo(従来型A321)旅客機を貨物専用機に改修するもので、10トン車約5-6台分に相当する1機当たり28トンの貨物を搭載できる。改修する機体は、ジェットスター・グループ以外が運航していたものを調達する。
A321P2Fは客室だったメインデッキには、AAYコンテナを14台、旅客機でも貨物室として使用していた床下のロワーデッキには、AKH(LD3-45W)コンテナを10台搭載できる。運航地点は羽田と成田、新千歳、北九州、那覇の5空港から始める。ジェットスター・ジャパンはA320(1クラス180席)を運航しており、パイロットは同じライセンスでA321P2Fも運航できる。
ヤマトがA321P2Fをジェットスター・ジャパンにサブリースし、運航便はJAL便名を付与するコードシェア(共同運航)を実施。同機の貨物搭載スペースをJALがフォワーダー(利用運送事業者)に販売する。
ヤマトHD傘下のヤマト運輸で戦略渉外を担当する梅津克彦執行役員は「小型機の中では最大の搭載量が得られ、クール宅急便もコンテナで運べる最適な貨物機だ」と、機種選定理由を語った。
JAL執行役員の岩越宏雄・貨物郵便本部長は「昼間は成田から新千歳と北九州、那覇、夜間は羽田から3地点に運航する」と説明した。
「確実な需要見込める」
物流業界では、慢性的なドライバー不足に加え、2024年4月1日から自動車運転業務の年間残業時間の上限が960時間になることにより、輸送力の確保が求められている。「持続的かつ強靱なネットワークを確立することが今のゴールだ」(梅津氏)と、合弁会社の設立などは現時点で想定せず、大雪などの悪天候でも輸送力を維持できる体制構築を目指す。
梅津氏は「特に長距離の900キロから1200キロのレベルになると、今後は輸送機能を自分たちで持たなければならないだろう」と述べ、航空各社の旅客便の床下貨物室を使った「ベリー」に加えて、貨物専用機が必要と判断した。残業時間制限の影響としては「地域によっては途中でトラックを乗り換えなければならなくなる」(同)として、現在のように出発地から目的地まで一気に運べなくなる地域が出てくるという。
JALグループは2010年の経営破綻後、貨物機の運航からは撤退し、航空貨物輸送はベリーのみになっていた。岩越氏は「貨物機はボラティリティの高いビジネス。今回は確実な需要が見込め、今後の社会環境を考えると成長性がある」と、ヤマトが機体を導入し、貨物スペースの販売先が同社となることから協業を決めたという。
関連リンク
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