エアバスの大型輸送機A300-600ST「ベルーガST」の3号機(登録記号F-GSTC)が12月24日午後、関西空港へ初飛来した。仏マルセイユからエアバス・ヘリコプターズの大型双発ヘリ「H225 スーパーピューマ」を輸送しているとみられ、近く同社の格納庫がある神戸空港へ向かう見通し。ベルーガは通常エアバス機の主翼などを欧州内で運んでおり、日本に同型機が飛来するのは1999年以来22年ぶり。
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航空機の位置情報を提供するウェブサイト「フライトレーダー24(Flightradar24)」によると、ベルーガは現地時間19日に拠点とする仏トゥールーズからエアバス・ヘリコプターズの工場があるマルセイユへ4Y8001便としてフェリー。積荷を搭載後、21日に最初の経由地であるポーランドのワルシャワへ向けて4Y8002便として出発し、22日に第2経由地のロシア・シベリアのノボシビルスクへ4Y8003便として、23日に第3経由地のソウル(仁川)へ4Y8004便として向かった。24日はソウルを午後0時50分すぎに4Y8005便として出発し、関空のB滑走路(RWY24R)には午後2時29分ごろ着陸した。
マルセイユで撮影された写真からは、積荷のヘリは警察庁が発注した機体とみられる。
ベルーガはシロイルカを意味する愛称の通り、どことなくユーモラスな外観で、欧州各地で製造されるエアバス機のパーツをトゥールーズや独ハンブルクの最終組立工場などへ輸送している。
ベルーガSTはA300-600Rをベースにしており、エンジンは米GE製CF6-80C2を搭載する。エアバスが1970年代からパーツ輸送に使用してきた、ボーイング377ストラトクルーザーの改修機「スーパー・グッピー」の代替機として開発された。貨物室内の容積は1400立法メートル、積載量は47トン、航続距離は1650キロメートルとなる。
1996年1月に就航し、全5機がエアバスの子会社「Airbus Transport International(ATI、BGA/4Y)」によって運航されてきたが、初号機(F-GSTA)と2号機(F-GSTB)は運航から離脱している。エアバス機のパーツ輸送以外にも使われており、日本へは1999年にドラクロワの絵画「民衆を導く自由の女神」を輸送する際にパリから成田へ飛来した。
後継機となるA330-200F貨物機がベースの「Beluga XL(ベルーガXL)」は、2020年1月9日に就航した。従来のベルーガSTと比べて機体断面は1メートル広くなり、ペイロードも12%増加。ベルーガSTは大型機A350の主翼を1つ運んでいるが、ベルーガXLは2つ同時に運べるようになった。ベルーガSTは順次ベルーガXLと交代し、全機が退役する。
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BelugaST (Airbus)
Airbus
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