日本航空(JAL/JL、9201)は、3000億円規模の資金調達実施に向けて検討に入った。9月9日午前に日本経済新聞が報じたもので、JALも資金調達を検討していることを認めた。2021年4-6月期の自己資本比率は42.4%と高水準を維持しているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が長期化していることから、早めに資金調達を進め、エアバスA350-1000型機の国際線投入など機材更新による運航コスト削減や、回復期に観光需要を取り込むLCC事業の強化など中期経営計画を計画通り進めることで、航空需要の回復が本格化する2024年以降の成長につなげる。
*9月10日に正式発表。記事はこちら。
—記事の概要—
・A350で運航コスト削減
・超音速機に出資
A350で運航コスト削減
今回の資金調達は、株式に近い性質の劣後ローンや、普通社債の発行を検討。劣後ローンは金利が高い代わりに返済の優先順位が低く、一部を資本に組み入れられるため、財務の健全性を維持しながら資金調達できるメリットがある。企業の信用格付けが低下すると、今後の借入や社債発行に悪影響が出るため、劣後ローンを活用するとみられる。
JALは、2020年11月に公募増資で約1800億円を調達。機材更新や、ZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)とジェットスター・ジャパン(JJP/GK)、春秋航空日本(SJO/IJ)の3社によるグループLCC事業の強化を進めているが、7-9月期の国内線需要回復がデルタ株のまん延により遅れていることなどから、新たに大規模な資金調達が必要と判断した。
今後世界的に状況が悪化したり長期化した場合、現状であれば借りられる資金が借りられなくなる恐れもあり、手元資金の状況が健全なうちに調達する狙いもある。
JALの機材計画は、国内線の大型機はエアバスA350型機に統一し、国際線はボーイング777型機をA350に更新。長距離国際線機材である777-300ERの後継機となるA350-1000を、2023年度から欧米路線に投入する。A350は標準型のA350-900を国内線に17機、長胴型のA350-1000を国際線に13機導入する計画で、A350-900は10号機まで受領しており、今年度末までに15号機が納入され、2022年3月時点で14機が稼働している見込み。
777は就航から20年以上経過している。A350に置き換えると燃費や騒音を抑えられるが、経年機となった777は整備コストなど日常的なコストが増加傾向にあるため、機材更新を計画通り進めた方が、更新を遅らせるよりも運航コストを抑えられると判断している。
LCC事業の売上は、コロナ前の2019年度比で2025年度は約2倍に成長させる。100%子会社のZIPAIRが東南アジアやハワイ、米国などの中長距離国際線、6月に子会社化した春秋航空日本が中国路線、50%出資するカンタス航空(QFA/QF)系のジェットスター・ジャパンが国内線と近距離国際線を展開し、成田空港を拠点に異なるマーケットを3社で取り込む。
超音速機に出資
海外では、コロナ後を見据えた大型投資が活発だ。ユナイテッド航空(UAL/UA)は、6月3日にJALが出資する米Boom Technology(ブーム・テクノロジー)が開発中の超音速旅客機「Overture(オーバーチュア)」を15機発注。35機のオプション(仮発注)付きで、2029年の商業運航開始を目指す。
ユナイテッドは6月に同社の機材発注では過去最多となる計270機にのぼるナローボディー機(狭胴機、単通路機)を追加発注しており、ボーイング737 MAXを200機、エアバスA321neoを70機を導入する。また、19人乗りの電動航空機を手掛けるスウェーデンのベンチャー企業Heart Aerospace(ハート・エアロスペース)に出資し、電動旅客機ES-19を100機取得する契約を条件付きで締結した。
デルタ航空(DAL/DL)もA350-900を7機と737-900ERを29機の計36機を中古で導入すると7月に発表しており、コロナ影響で値ごろになった程度の良い中古機をそろえることで、コロナ後の需要回復に備えている。
関連リンク
日本航空
正式発表
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