国土交通省は9月3日、ソラシドエア(SNJ/6J)の客室乗務員が乗務前のアルコール検査を別の客室乗務員に身代わりで受けさせていたとして、同社を厳重注意した。客室の責任者である先任客室乗務員が身代わり検査を主導していた。国交省は再発防止策を17日までに報告させる。
身代わり検査は、2020年10月26日(事案1)と今年3月25日(事案2)の計2回発生。いずれも客室の責任者を務める先任客室乗務員Aが不正を指示していた。ソラシドによると、内部告発で発覚し、会社側が調べたところ先任客室乗務員Aら3人による不正が明らかになり、監督する国交省航空局(JCAB)に報告した。
事案1は、2020年10月26日の那覇午後4時発の中部行き6J70便(ボーイング737-800型機、1クラス174席、登録記号JA805X)で発生。先任客室乗務員Aが乗務前のアルコール検査時に、自身の身代わりとして客室乗務員Bに検査を受けさせ、Aはアルコール検査を受けずに乗務した。同便には乗客132人が乗っていた。
事案2は、今年3月25日の那覇午前9時5分発の鹿児島行き6J84便(737-800、1クラス174席、JA813X)で発生。事案1で先任客室乗務員Aの身代わりになった客室乗務員Bが乗務前のアルコール検査を受ける際、一緒に乗務するAが同乗する客室乗務員Cに対し、Bの身代わりになるよう指示した。このため、Bはアルコール検査を受けずに乗務した。同便には乗客149人が乗っていた。
事案2ではアルコール検査が未実施だっただけでなく、6J84便に乗務していた4人の客室乗務員のうち、先任客室乗務員A、客室乗務員BとCの3人が、乗務開始7時間前まで会食で飲酒していた。ソラシドの運航規程では乗務開始8時間以内の飲酒を禁じており、3人はこれに違反している。
ソラシドによると、飲酒量は時間が経過しているため明確になっていないものの、事案1では先任客室乗務員Aがビールと焼酎を複数杯飲んでいた。事案2では、先任客室乗務員Aと客室乗務員Bが相当量を飲酒していたことがわかったという。一方、客室乗務員が酒臭いなど乗客からの苦情や問い合わせはなかったとしている。
航空各社では、パイロットや客室乗務員による乗務前の飲酒問題が2018年から2020年にかけて発覚した。ソラシドは当時、パイロットや客室乗務員の飲酒について国交省から指導を受けたことはなかった。
今回の事案はいずれもJCABが認可した運航規定に違反しており、ソラシドは「安全は経営の基盤であり、航空輸送の原点であることを改めて肝に銘じ、今後、原因の分析に基づいた再発防止策を策定の上、速やかに対応を実施し、信頼回復に向けて全社を挙げて取り組んでまいります」とコメントしている。客室乗務員の処分については、調整中としている。
【事案1】
2020年10月26日発生
・先任客室乗務員Aがアルコール検査の際、客室乗務員Bを身代わりにした
・先任客室乗務員Aは、乗務前のアルコール検査を未実施で那覇発中部行き6J70便に乗務した
【事案2】
2021年3月25日発生
・客室乗務員B(事案1と同人物)がアルコール検査の際、先任客室乗務員A(事案1と同人物)の指示で客室乗務員Cを身代わりにした
・客室乗務員Bは、乗務前のアルコール検査を未実施で那覇発鹿児島行き6J84便に乗務した
・6J84便に乗務した先任客室乗務員A、客室乗務員BとCの3人は、飛行勤務開始7時間前まで飲酒していた
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