世界の航空会社で使用されてきた小糸工業(11年にKIホールディングスへ社名変更、20年4月1日に小糸製作所が吸収合併)製の航空機用シートが7月末で取り下ろし期限を迎え、国内各社での換装作業が期日前に完了した。
2019年3月末で退役した初代政府専用機「B-747-400」にも同社製シートは採用され、国内では数少ない世界的シェアを誇る航空機内装品メーカーだった。航空各社はすでに他社製シートへの交換や、当該シートを搭載した機材の退役を済ませており、日本の空から姿を消した。小糸製作所(7276)では、小糸工業を合併する前から航空機用機器を独自に手掛けているものの、設備投資の負担が大きいシートへの再参入の動きはみられない。
シート自体の評価は高かったものの、数少ない日本の航空機シートメーカーが姿を消すまでの10年をまとめた。
—記事の概要—
・TCD発行から10年
・日本だけで再検査4万席
・不合格材料で製造発覚
TCD発行から10年
小糸工業は航空機用シートの衝撃試験や耐火性試験の結果を改ざん・ねつ造していたとして、2010年2月に国土交通省航空局(JCAB)から業務改善勧告を受けた。新規シートの出荷停止や出荷済みシートの再試験などが実施され、安全性の再確認に追われた。
2011年6月8日には、国交省が航空機の安全性を確保するための整備や改修を指示する耐空性改善通報(TCD)が発行された。航空機シートは耐荷重試験など高い安全性を求められるため、すぐに代替品を調達することが難しい。TCDは安全確認の優先度が高いものから期限が定められ、10年後となる今年7月末が同社製シートを取り下ろす事実上の期限となった。
航空機用シートは適切な整備を続ければ、機体と同様20年程度は問題なく使用できるが、近年は航空会社のサービス向上のペースが早まっており、搭載から10年もすると客室改修により交換対象になることも少なくない。また、リース機材であれば8年程度で返却期限が訪れる。安全性が確認できても、10年もすれば姿を消すシートが多いとも言えるだろう。
日本だけで再検査4万席
TCDが発行された2011年6月時点で、国内で対象となった機体と座席数は、日本航空(JAL/JL、9201)グループが120機で1万3046座席、全日本空輸(ANA/NH)グループが136機で2万5215座席、日本貨物航空(NCA/KZ)が8機で48座席。4万席近い3万8309座席が対象になった。
JALとANAではTCDに従って安全性を再確認後は、客室改修などでシートを段階的に交換したり機材を退役させており、期日の7月末を迎える前にシートの入れ替えをすべて終えた。貨物機を運航するNCAも、2019年までにボーイング747-8F型機へ機材統一を終えており、対象シートを積んだ機材は姿を消している。
国内3社のうち、もっとも
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