全日本空輸(ANA/NH)グループで空港売店を展開するANA FESTA(ANAフェスタ)と無人決済システムを手掛けるTOUCH TO GO(TTG、東京・港区)は8月26日、羽田空港内に27日に開業する無人決済店舗「ANA FESTA GO」を報道関係者に公開した。第2ターミナル地下1階北側の既存店舗をリニューアルするもので、店内で利用客が手にした商品をカメラとセンサーが認識することで、店員がいない「セルフレジ」で買い物ができる。無人決済システムの導入で、店員を人によるサービスが必要な店舗に配置したり、同じ空港内の複数店舗の運営効率化、売れ筋商品の分析などに役立てる。
ANA FESTA GOには、羽田空港内のANA FESTAで売上ランキング上位の商品を中心に、洋菓子や和菓子、ANAオリジナルのカレーなど約100種類の土産物を用意。店舗面積は約41.95平方メートルで、18台設置したAIカメラや棚のセンサーで来店者が手にした商品をリアルタイムに自動認識する。商品を手にしてセルフレジの前に立つと、タッチパネルに商品と購入金額が表示され、内容を確認後に支払いを済ませると店を出られる。
支払いは電子マネーとクレジットカード、現金のいずれか。2次元バーコード(QRコード)決済は今後導入を予定している。ANAのマイル制度「ANAマイレージクラブ(AMC)」会員の場合、支払い前に会員カードなどを提示すると、100円(税抜き)につきANAのマイルを1マイル付与する。ANAカードで決済した場合は、さらに200円につき1マイルを上乗せし、1回の支払いが1000円以上の際は5%割り引く。
店舗開発に携わった全日空商事の事業創造室リテール戦略チームのリーダーで、ANAグループのマーケティングやマイル事業を担うANA Xのデータベースマーケティングチームのマネジャーを兼務する武井実氏は、4年ほど前から無人店舗の構想を練っていたという。ANA FESTA既存店の決済状況は「マイレージ会員は現金が3割でANAカードがほとんど。非会員は現金が6割」と、現金で購入する人の割合がまだ高いことから現金決済を残したという。
ANA FESTAの牛尾隆之東日本支店長は、「ランキングに応じ、3カ月に1回は品揃えを変えていきたい」と述べ、棚に設置されたセンサーをTTGが調整する必要があることから、当面は3カ月ごとの商品見直しになるという。
ランキングを活用する一方で、未来を予測する商品展開も考えている。「来店者が一度手に取った後、棚に戻した商品のデータは今まで残っていなかった。商品に興味を持ったものの、何かが足りなかったと考えられるので、商品改良に役立てたい」(武井氏)と述べた。
ANA側が無人決済システムの開発を依頼したTTGは、JR東日本スタートアップ(東京・港区)とサインポスト(3996)、ファミリーマートが株主で、これまでにスーパーマーケットの紀ノ国屋などに導入実績があり、空港内に導入するのは初めて。TTGの阿久津智紀社長は、店舗を無人化することで「営業時間を延ばしたり、売上規模が小さい空港で人件費を抑えられる」と、店舗の採算性を向上できるといい、今後の労働人口減少の対応策にもなるとしている。今回のANA FESTA GO向けシステムでは、ANAマイルとの連携や、ANAカード利用時の割引などの機能を新たに開発したという。
ANA FESTA GOは、同時にリニューアルオープンする有人店舗「ANA FESTA 羽田B1 フロアギフト店」が隣接しており、商品の補充などは同店の店員が担う。
ANAは今後、ANA FESTAの店舗が複数ある空港や、地方空港にANA FESTA GOの展開を検討していく。武井氏は「羽田では(保安検査場通過後の)制限区域内など、購買傾向が異なる場所を考えたい」と述べた。
*写真は12枚。
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