エアライン, 解説・コラム — 2021年8月18日 12:58 JST

[試食記]JALの家庭向け機内食、自宅の電子レンジで調理

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 航空各社が8月16日に発表したお盆期間の利用実績によると、国際線のロードファクター(座席利用率)は3割前後と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響前であれば9割前後だった状況から激変し、2024年ごろまでは国際線の回復は難しそうだ。国内線の需要回復はこれよりは先行する見込みだが、これまでフルサービス航空会社(FSC)は国内線幹線や国際線の特に上級クラスで収益を上げることで、生活路線などを維持してきた。安定した航空路線網を維持する上でも、国際線の回復は不可欠だ。

 しかし、これまでの予測通りに推移しても、3年はかかる。航空各社ではこの1年間、遊覧飛行や機内食の販売といったさまざまな商品を生み出してきた。そうした中、日本航空(JAL/JL、9201)が通販サイト「JALショッピング」で昨年8月から販売を始めた国際線ラウンジのカレー「JAL特製オリジナルビーフカレー」は、大きな反響を呼んだ。JALがこのカレーを広く一般に自社販売することはなかったため、空港のラウンジでしか楽しめない味だったからだ。ラウンジで提供しているものとまったく同じものなので、1袋1kgと業務用そのものズバリのカレーが届く。

賛否両論の監修メニュー「そぼろと味わう牛すき焼き重」(手前)と北海道のご当地メニュー「旨味たれ豚丼」=21年8月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 その後、JALとJALショッピングを運営するJALUX(ジャルックス、2729)は、一般販売用に開発した国際線機内食「BISTRO de SKY(ビストロですかい)」の販売を7月21日から始めた。エコノミークラスの機内では、サラダなどとセットでメインディッシュが出てくるが、付け合わせがなくても満足できるようにご飯と主菜のバランスを調整し、家庭用電子レンジで温めても食材の食感が残るよう調理の加熱時間を短くしたという。

 機内では加熱時にスチームオーブンを使っているが、今回の機内食は家庭用電子レンジの使用を想定。自宅でもおいしく食べてもらおうというコンセプトの機内食なので、実際に電子レンジで調理してみた。

—記事の概要—
「賛否両論」と北海道グルメ
電子レンジでも水分維持
“定番中の定番”は出てくるのか

「賛否両論」と北海道グルメ

 BISTRO de SKYは現在、東京・恵比寿の人気和食店「賛否両論」監修メニューと、北海道グルメをテーマにしたご当地メニューの2種類を展開。JALUXによると、7月の第1弾は6日間で完売したという。6食セット(3種類2食ずつ)と12食セット(3種類4食ずつ)を用意したが、6食セットの方が売れ行きが良かったそうだ。

JALの一般販売向け機内食「BISTRO de SKY」=21年7月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 私は7月に都内で開かれた製品発表会を取材したが、この日はその後も打ち合わせや成田空港での取材が入っていたりと、会場での試食やサンプルを持ち帰ることができなかった。このため、8月に第2弾が発売された際、監修メニューとご当地メニュー各1種類ずつ、サンプルを用意していただいた。

 賛否両論の監修メニューは「そぼろと味わう牛すき焼き重」、北海道のご当地メニューは「旨味たれ豚丼」。6食セットと12食セットとも、ビーフコンソメスープが付いてくる。

 冷凍品なので、調理前に解凍する必要がある。機内食と一緒に送られてくる説明書によると、24時間冷蔵解凍し、電子レンジで500W、3分加熱するのがおすすめだという。

 しかし、多くの人はお昼時などにお腹の空き具合と連動して、「今日は機内食を食べようかな」などと意思決定をするのではないか。私は8月16日、「入国者数の上限緩和、航空会社にどう影響?」という解説記事を午後2時すぎに載せ、お昼ご飯を何にしようかと考え、機内食を食べることにした。

 昼ご飯と言いつつも、加熱後の写真も撮らなければならないので、牛すき焼き重と豚丼の両方とも食べることにした。機内取材でも、洋食と和食両方の写真を撮らなければならないため、一度に2食食べる機会はそれなりにある。品数の多いビジネスクラスはなかなかハードだが、今回はワンプレートなので気が楽だ。

電子レンジでも水分維持

 説明書によると、電子レンジで解凍する場合は200Wで6分だという。我が家のレンジには200Wの設定がなく、150W、300W、500W、600W、800Wのどれかだ。最初に解凍した牛すき焼き重は150Wで8分、2つ目の豚丼は300Wで4分にしたが、その後フタを点線まで開けて500Wで3分加熱したところ、どちらも問題なく温まった。説明書には、中心部が冷たい場合は10秒ずつ追加加熱するように書いてあった。

賛否両論の監修メニュー「そぼろと味わう牛すき焼き重」(右手前)と北海道のご当地メニュー「旨味たれ豚丼」。それぞれリーフレットが付属する=21年8月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ビーフコンソメスープは粉末で、カップに入れてから140ccのお湯を注ぐ。スープの袋には70度から80度のお湯と書いてあったが、ポットは98度を示していた。水を少量足すことも考えたが、テーブルに2品並べて写真を撮ったりしていれば相応に冷めるだろうと、98度のお湯を注いだ。

 写真も撮り終わり、牛すき焼き重から食べてみた。ご飯をはじめとした食材の水分が飛ぶことはなく、ご飯はもっちりし、肉や野菜は通常のお弁当と同じような食感だった。機内食も料理の中で大別すれば弁当なので、市販の弁当感覚で食べられるのは、家庭でおいしく食べられるように工夫した成果と言えるだろう。

賛否両論の監修メニュー「そぼろと味わう牛すき焼き重」(右手前)と北海道のご当地メニュー「旨味たれ豚丼」、ビーフコンソメスープ=21年8月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 味については個人の好みによるところが大きいので割愛するが、機内食に何を求めているかで評価が異なるのではないだろうか。家庭でのおいしさを優先したい人と、機内とまったく同じものを食べたい人では、評価基準が違うはずだ。

 機内と同じものを食べたい人は、電子レンジを使うことで多少食感や味が変わるのはやむを得ないと考えているかもしれないし、電子レンジは使わずに機内と同じくスチームオーブンで加熱する人もいるだろう。

JAL特製オリジナルビーフカレー(1kg x 4袋)はこのような姿だ=20年9月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 昨年8月に発売されたラウンジのビーフカレーの場合、空港で使っているものをそのまま提供したことで、味がまったく同じ点は高く評価されていた。一方で、1袋が1kgというのは特に1人暮らしの人にはハードルが高く、弊紙のTwitterにも「もう少し小分けにして欲しい」といった声が寄せられていた。

 レトルトカレーが1食200g前後なので1kgは5食分程度だが、荷姿は業務用そのもの。それなりの覚悟が必要だ。

 カレーを製造する側からすると、今後も長期間販売するのであれば生産ラインに投資して市販用サイズを作ることも可能だろう。しかし、このカレーはもともと門外不出だった以上、コロナが収束すれば販売も終わるかもしれない。

 こうした点を考えると、いわゆる「ファン心理」としては機内や空港で食べられるものと同じ味であってほしいが、今回の家庭向け機内食のように利便性は考えて欲しい、といったところではないだろうか。

“定番中の定番”は出てくるのか

 BISTRO de SKYは今後、第3弾以降の新メニュー展開も考えているという。今のところハンバーグやビーフカレーのような定番メニューはまだ登場していないので、今後はこうした洋食も出した方が良いのではと感じた。発表会の取材中も、某テレビ局とその話題で盛り上がった。

 しかも、和風ハンバーグとか何とかソースのハンバーグではなく、王道のデミグラスソースのハンバーグや、カレーも体にやさしいとかではなく、普通のビーフカレーが個人的には出て欲しい。定番中の定番を展開後、それらの派生メニューが出てくるのはいいが、やはり「普通の機内食」を求める人も一定数はいるのではないかと思う。

 家庭で食べてもおいしいという、メニューとは違った切り口で登場したBISTRO de SKYは、どんな商品展開になるのだろうか。

関連リンク
BISTRO de SKY(JALショッピング)
日本航空
JALUX

BISTRO de SKY第1弾
JAL、電子レンジでもおいしい家庭向け機内食(21年7月21日)

BISTRO de SKY第2弾
JAL、家庭向け機内食第2弾 賛否両論監修の牛すき焼き重や北海道の豚丼(21年8月4日)

JALの機内食やラウンジのカレー
JAL、ラウンジのビーフカレー再販 月1回販売へ(21年7月8日)
JALラウンジ特製ビーフカレーが我が家にやってきた 1袋1kgって何食分?(20年9月10日)
JALラウンジのビーフカレー、初のレストラン提供 成田空港近く「御料鶴」(20年6月12日)

ANAの機内食販売
「求められているのは機内と同じもの」特集・9万食売ったANA機内食通販の舞台裏(21年2月7日)
ANA、エコノミー機内食とラウンジカレー通販(20年12月11日)

  • 共有する:
  • Facebook
  • Twitter
  • Print This Post
キーワード: