航空業界にとって世界的な課題だったパイロット不足が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で一変した。国際線を中心に大量運休が生じたことで、海外ではパイロットも解雇対象となったほどだ。一方で、パイロットの育成は時間が掛かり、適正規模を常時維持しないと需要回復期に出遅れる可能性もあり、航空会社にとって頭の痛い問題だ。
民間機のパイロットを適正な規模で維持する際、課題となるのは1人のパイロットが一度に乗務できる機種が限定されることだ。例えばボーイング787型機を操縦しているパイロットが、夕方はエアバスA320型機、明日はボーイング767型機といった乗務はできず、機種移行訓練を経て初めて別の機種に乗務できる。
こうした移行期間を最小限にしようと、エアバスは小型機のA320から超大型機のA380まで、一定の類似性を持たせた。FAA(米国連邦航空局)やEASA(欧州航空安全庁)といった航空当局も短時間での移行を認めている。
ボーイングも、10年前の2011年に商業運航がスタートした787は、これまで主流だった777とコモナリティ(共通性)を持たせてコックピットを設計。エアバス機と同様に、パイロットの機種移行を容易にするためのものだ。
日本では、国土交通省航空局(JCAB)の通達で、2019年4月から787と777はパイロットの混乗が認められ、日本航空(JAL/JL、9201)は同年からトライアルを開始。777の機長経験者で、混乗を認められた人が787にも乗務できるようにした。JAL運航本部運航訓練部の787訓練室と777訓練室で飛行訓練教官を務める古川大心機長に話を聞いた。
—記事の概要—
・1カ月ごとに変更可能
・違いの少ない777と787
1カ月ごとに変更可能
「777と787の混乗は、MFF(Mixed Fleet Flying)という制度によるもので、1社で500時間以上飛行し、技能審査を2回以上受けている機長が対象になります。777のライセンス保持者で、787へ移行後20レグまたは50時間以上フライトした人が対象です」と、混乗制度の概要を古川さんが説明する。現在は古川さんを含め10人が混乗を認められた機長となる。
つまり、機長として一定の乗務経験がある人のうち、777のライセンスを持つ機長が787へ機種移行後、完熟すると混乗の訓練を受けられるようになる。これまでは777のパイロットが787へ移行後、再び777に復帰する場合、最長で2カ月程度の訓練が必要だったという。「復帰訓練の基本的な考え方が、フライトから離れていた人を想定しているためです」と、777と787のように操縦のコモナリティを持たせた機種を行き来することは前提になかった。
古川さんは2017年から1年間行われた官民合同の
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