全日本空輸(ANA/NH)は7月19日、成田空港を出発する国際線で顔認証技術を用いた“顔パス”の搭乗手続き「Face Express(フェイスエクスプレス)」の運用を始めた。今年4月から2カ月間実証実験を進めてきたもので、顔情報を登録すると保安検査場や搭乗口などで搭乗券やパスポートを提示する必要がなくなり、接触機会の少ない搭乗手続きを実現できる。当初は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の書類確認などの関係で、係員の確認が不要なメキシコシティ線のみ利用できる。
Face Expressは、成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)が導入した設備で、保安検査場の入口などに日本電気(NEC、6701)の顔認証システムを設置。係員が搭乗券とパスポートを目視で確認せずに通過できるようになった。
ANAの場合、乗客が自動手荷物預け機で顔写真とパスポート情報、搭乗券情報をひも付けると、認証システムに情報が一時的に格納される。保安検査場の入口や搭乗口などで撮影した乗客の顔写真を認証システムの情報と照合して本人確認する。
手荷物の預け入れ以降、保安検査や搭乗口で搭乗券とパスポートを係員に提示する必要がなくなり、接触リスクの軽減にもつながることから、感染防止策としても位置づけている。
ANAの担当者によると、手荷物を預け入れる際に、国土交通省からマスクを外して本人確認をするよう求められていることから、係員の配置状況など確認を徹底しやすい自動手荷物預け機で顔情報を登録することにした。現時点では、手荷物を預けない乗客はFace Expressを利用できないが、ANAによると国際線全体で約8割の乗客が手荷物を預けているという。
19日からの対象便は、成田発メキシコシティ行きNH180便。顔認証は成田第1ターミナルCゾーンの自動手荷物預け機と保安検査場の中央入口、7カ所の搭乗口(51-57A)が対応している。19日のNH180便は、乗客49人のうち25人が成田から搭乗する人で、残り24人は乗り継ぎ客だった。成田から搭乗した25人のうち、Face Expressを利用した人は14人で、出張で同便に乗った大阪府の男性会社員(21)は「海外出張は初めてだったが、画面に従って手続きするだけで簡単だった」と感想を話した。
顔認証技術を使った搭乗手続きは、航空会社などが加盟するIATA(国際航空運送協会)が推進する旅客搭乗手続きの自動化プロジェクト「Fast Travel(ファストトラベル)」のひとつで、「OneID(ワンアイディー)」と呼ばれている。NAAは顔パスで搭乗できることが利用者に伝わるよう、OneIDに「Face Express」と愛称を付けてロゴも用意し、成田と羽田の両空港に導入した。
成田では、ANAと日本航空(JAL/JL、9201)の国内2社が4月から実証実験を実施。JALも19日から本運用に入り、チェックイン時も顔認証に使う写真を登録できる(関連記事)。ANAによると、羽田への導入も検討しているという。
関連リンク
Face Express(成田国際空港)
成田空港
全日本空輸
・JAL、顔パス搭乗スタート 成田・羽田の国際線(21年7月19日)
・成田空港、顔パス搭乗スタート 7月から本格運用、羽田も(21年4月14日)
・顔パス搭乗、羽田でも実証実験 JAL・ANAら4社導入(21年4月23日)
・成田空港、顔パス搭乗20年春から 日本初、NECの顔認証システム採用(19年6月1日)
・成田空港、「顔パス」で搭乗 日本初導入、20年春からJALとANA(19年3月2日)