エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2021年7月16日 21:25 JST

「安心してフライトに臨めた」写真特集・ANA早期退役777-300ER JA780A

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　新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の影響を受け、全日本空輸（ANA/NH）を傘下に持つANAホールディングス（ANAHD、9202）が2020年から進めてきた余剰機材の売却。ジャンボの愛称で親しまれたボーイング747型機の後継として2004年11月15日に就航した長距離国際線の主力機777-300ERは、コロナ前に28機保有していたうち、初期導入機を中心に13機が売却され、13機目の機体（登録記号JA780A）が7月15日、羽田空港から売却先の米国へ向かった。

羽田空港で出発前に777-300ER JA780Aを点検する際にエンジンGE90-115Bに触れるANAの山口機長＝21年7月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

　JA780Aは14年前の2007年5月に引き渡された機体。座席数は4クラス264席で、ファースト8席（1-2-1席）、ビジネス52席（1-2-1席）、プレミアムエコノミー24席（2-4-2席）、エコノミー180席（3-4-3席）だった。フランクフルトを現地時間3月28日に出発した乗客を乗せない貨物専用便、成田行きNH9656便が商業運航のラストとなった。この機体の退役で、ANAの777-300ERのうち4クラス264席仕様は姿を消した。

　ラストフライトの操縦は山口聖史機長（PIC）、橋本章機長、原剛機長が担当。山口機長は「安定した機体で、安心してフライトに臨めました」と777-300ERを高く評価し、JA780Aは「トラブルがない機体でした」と、中でも安心できる機体だったという。

　JA780AはフェリーフライトのNH9434便として、羽田空港の805番スポットを午前8時44分に出発。スポットを出ると、双発機ながら4発機のジャンボを置き換えた巨大なエンジン、GE製GE90-115Bが轟音を上げて1基ずつスタートした。離陸はC滑走路（RWY34R）で、翼を左右に振りながら雲の中を通り抜けながら日本を離れた。ホノルルのダニエル・K・イノウエ国際空港（旧称ホノルル国際空港）を経由し、カリフォルニア州のモハーヴェ（モハベ）空港が最終目的地となる。

　ANAによると、ホノルル経由は従来のアンカレッジ経由よりもコストを抑えられるという。一方で、ホノルル発着便が回復してくるとスポット（駐機場）に空きがなくなってくることから、今の時期だからこそのルートと言えそうだ。

L1ドア付近に「Thank you」と寄せ書きされたJA780A＝21年7月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つ777-300ER JA780Aを点検するANAの山口機長＝21年7月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つANAの777-300ER JA780A＝21年7月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

　退役した13機は、登録記号順にJA731A-736A、JA777A-783A。12月1日に日本を離れたJA733Aが最初で、5年前の2016年8月に東京オリンピック・パラリンピック開催に向けてオリンピック旗（五輪旗）を日本へ運んだJA781A、機内をレストランにするイベント「翼のレストランHANEDA」の初回に使われたJA782A、6月に使用したJA779A、機内結婚式の挙式会場となったJA783Aなど、余剰機材の活用イベントで活躍した機体も姿を消した。

　777-300ERを操縦するパイロットは、操縦のしやすさや安定性、信頼性の高さを評価している。それ故、今回退役した13機はいずれも旅客機が一線を退く目安となる就航から20年に満たなかったことから、早期リタイアを惜しんでいた。

　13機の早期退役が一段落し、残る15機の777-300ERは今後も長距離国際線を中心に飛び続ける。特にファーストクラス「THE Suite」とビジネスクラス「THE Room」がドア付き個室タイプの新仕様機（4クラス212席）は、ひと時代前のファーストよりも快適なビジネスクラスが売りだ。コロナで海外出張の需要が落ち込むことが予想されるものの、繁忙期には上位クラスほど人気で予約が難しかったことから、少しでも客足が戻ってほしいものだ。

＊写真は28枚。