ANAホールディングス(ANAHD、9202)が出資するavatarin(アバターイン、東京・中央区)は7月15日、世界初の瞬間移動サービス「avatarin(アバターイン)」のベータ版を今秋から提供を始めると発表した。同時にアバター(分身)と呼ばれる遠隔操作ロボット「newme(ニューミー)」を初めて全面リニューアルし国産化。法人向け利用プランの予約を始めた。
ANAHDは航空事業に次ぐノンエア(非航空)事業の柱の一つとして、アバター事業を2018年4月にスタート。newmeは2019年10月にお披露目され、アバターを事業化するavatarin社は2020年4月に設立された。瞬間移動サービスのavatarinは、遠隔地の行きたい場所に設置されたnewmeを選び、自宅などからインターネット経由で接続し、自分がその場にいるかのように移動したり、現地の人と会話などができる。
すでに水族館見学や自動車工場の社会科見学、デパートでの買い物、病院での実証実験などを実施している。ベータ版に先行する形で、8月1日から31日までの夏休み限定企画として、美術館など4つの施設で30分間のアバター旅行ができる。鳥取県倉吉市の「円形劇場くらよしフィギュアミュージアム」、埼玉県深谷市の「渋沢栄一 青天を衝け 深谷大河ドラマ館」、神奈川県箱根町の「箱根ガラスの森美術館」、香川県高松市の新屋島水族館が対象で、現地に設置されたnewmeを自宅などのパソコンから操作し、“瞬間移動”を体験できる。
また、newmeの操作を練習できるトレーニングセンターをavatarin社のオフィス内に開設。空港を模した施設で、パソコンのカーソルキーでnewmeを動かし、滑走路や誘導路を自由に走行できる。壁にはクイズを用意し、newmeのカメラを上下に動かす練習ができるようになっている。
2019年の登場から初めて全面刷新した新型newmeは、デザインは初代を踏襲しつつ、CPUなど内部はネジ1本まで見直し、走行性能の向上やステレオカメラの搭載、稼働時間の延長などを実現したという。ANAHDは大分県でアバターの実証実験を2019年から実施しており、県内企業のデンケン(大分県由布市)がnewmeを量産する体制を整えた。
avatarin社の深堀昂CEO(最高経営責任者)は、新型newmeについて「デザインはヒューマノイドとして極限までそぎ落としたもので、ロボットが好きな方に売るのではなく、家族に会いたいといったニーズを考えた。ハードのモデルチェンジは最小限にし、スマートフォンのように機能を強化していきたい」と語った。
アバター事業の環境について「新型コロナは理解いただく追い風になっており、マインドセットの変化につながった。問い合わせが個人からも来るようになった」と、遠隔地とのコミュニケーション需要が増えたことが、事業の理解につながったという。「新型newmeには決済機能も搭載した」といい、遠隔操作ロボット単体で決済まで行えるのは初めてだという。
また、法人向け利用プランは、サービスの提供方法により金額は異なるが、もっとも安いプランは月額7万6780円(税込)から。
ベータ版開始により、avatarin社は早期黒字化を目指す。
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