全日本空輸(ANA/NH)が長距離国際線に投入している大型機ボーイング777-300ER型機のうち、事業見直しで早期退役する最後の機体(登録記号JA780A)が7月15日午前、羽田空港から売却先の米国へ向かった。フェリーフライトのNH9434便としてホノルルのダニエル・K・イノウエ国際空港(旧称ホノルル国際空港)を経由し、カリフォルニア州のモハーヴェ(モハベ)空港が最終目的地となる。
ANAは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による大幅な需要減少を受け、経年機を中心に機材の削減を実施。事業見直しで13機が早期退役する777-300ERのうち、JA780Aは最後の機体となった。
JA780Aは2007年5月に引き渡された機体で、座席数は4クラス264席(ファースト8席、ビジネス52席、プレミアムエコノミー24席、エコノミー180席)。商業運航のラストは、現地時間3月28日にフランクフルトを出発した成田行きNH9656便で、乗客を乗せない貨物専用便だった。総飛行時間は5万9678.24時間、総飛行サイクルは6440サイクルで、旅客機は通常20年程度は使用される中、14年と比較的早い退役となった。
羽田空港の805番スポットを午前8時44分に出発したJA780Aは、C滑走路(RWY34R)から午前8時55分に離陸後、翼を左右に振りながら雲の中を通り抜けながら日本を離れた。
ラストフライトの操縦は山口聖史機長(PIC)、橋本章機長、原剛機長が務める。ジャンボの愛称で親しまれた747の操縦経験がある橋本機長は「747でできることが、双発機の777-300ERでも同じ事ができて衝撃的でした」と、導入当時を振り返った。山口機長は「安定した機種で、JA780Aはトラブルもなく安心してフライトできました」と話した。「JA780Aは退役した13機の中では新しい機体で、コックピットもピカピカでもったいないですね。777は横風にも強く修正しやすい機体です」と高く評価していた。
3人の機長はこれまでの機体もモハーヴェまでフェリーした経験があり、現地に到着した時には涙を浮かべるパイロットもいるという。
ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は、2022年度末の機材を最大280機とし、コロナ前の2019年度末比で約25機(8.3%)削減する。777の早期退役や、導入予定機材の受領後ろ倒しにより、一時的に縮小する事業規模に合わせる。
コロナ前は28機保有していた777-300ERは、早期退役で約半数の15機になった。
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関連リンク
全日本空輸
写真特集・ANA早期退役777-300ER JA780A
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ANAの777-300ER退役
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