ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のANAウイングス(AKX/EH)が運航していたボーイング737-700型機のうち、最後まで残っていた6号機(登録記号JA06AN)が7月6日午前、羽田空港から米国の売却先への経由地となるアラスカ州アンカレッジへ向かった。ANAウイングスが運航する737-700は、6月27日のJA06ANによる商業フライトを最後に全機退役しており、最後の機体が日本を離れた。羽田のC滑走路から離陸すると、翼を左右に振って別れを告げた。
JA06ANは、ANAウイングスが運航していた機体では最後まで残ったもので、6月27日の岡山発羽田行きNH654便を最後に退役。残り2機となったJA05ANとJA06ANには、機首両サイドには退役記念デカールが貼り付けられた。
2006年8月1日の関西-那覇線が最初の投入路線で、総飛行時間は3万3097.20時間、総サイクルは2万2084サイクル。6日は売却先へ向かうフェリーフライト(回航便)のEH5672便として羽田の82番スポット(駐機場)を午前10時15分に出発し、C滑走路(RWY34R)を同28分に離陸。アンカレッジ経由でカリフォルニア州ヴィクターヴィルのサザン・カリフォルニア・ロジスティクス空港へ向かう。
EH5672便を担当する米澤源(はじめ)機長と矢澤大祐機長は、ともに737-700のフェリーは今回で3回目。米澤機長は「この機体で初めて国際線を飛んだ乗員もたくさんいる。国内でも天候が厳しい空港にも行き、この飛行機に育てられ、鍛えられた」と話した。ターボプロップ機のボンバルディアQ400(現デ・ハビランド・カナダDash 8-400)から737-700に機種移行した矢澤機長は「離島の短い滑走路でも安心してフライトできた。パフォーマンスが良く、すぐ止まってくれた」と、ジェット機ながら小さな機体ゆえ、制約のある空港でも運航しやすかったという。
737-700は、持株会社化前の全日本空輸(ANA/NH)が18年前の2003年6月28日に45機確定発注。当時運航していたエアバスA320型機(従来型)26機、2機の737-400、25機の737-500の小型機53機を更新する目的で選定し、機材統合で年間約60億円の運航コスト削減が見込めるとして、国内線と国際線両方に対応できる機材として大量発注した。その後の見直しで、発注した6割をより多くの乗客を運べる737-800に発注変更したことから、実際の導入は18機にとどまった。
国内線初便は2005年12月23日の福岡発中部行きNH212便で、国際線はエアーニッポン(ANK、当時)が運航する2006年1月10日就航の中部-台北線(EL2111/2112便)だった。国内線運航時は1クラス136席で、国際線は1列目から9列目までの最大36席を「Premium Economy Asia」と名付け、中央座席をテーブルとして1列2-2席として扱った。
世界的に主流の737-800と比べて胴体が5.9メートル短い737-700。退役時の座席数は、2クラス120席(プレミアムクラス8席、普通席112席)で、2008年6月1日に就航した737-800の2クラス166席(プレミアム8席、普通席158席)と比べると、普通席が46席(29.1%)少なかった。胴体中央の非常口も、737-800は片側2カ所あるのに対して、737-700は1カ所だった。
18機のうち2機は航続距離延長型の737-700ERで、世界初導入。「ANA BusinessJet(ANAビジネスジェット)」と命名され、座席数は最初に導入したJA10ANが2クラス48席(ビジネス24席、エコノミー24席)、2機目のJA13ANは世界でも珍しい全席ビジネスクラス(38席)で、成田-ムンバイ線などの国際線を飛んでいたが、2016年3月に2機とも退役。2007年3月の就航からわずか9年で退役と、20年は飛ぶ旅客機の中では短命で、就航16年で姿を消す737-700の中でも、10年未満で退役したのはこの2機だけだった。
ANAが運航していた737-700のうち、ANAHDが出資するエア・ドゥへ約半数にあたる8機が現在もリースされており、JA07AN-09AN、11AN-12AN、14AN-16ANが1クラス144席仕様で運航を続けている。同社では当面これらの737-700を運航していく。
なぜ16年で退役?
・ANA 737-700はなぜ16年で退役したのか 45機発注も6割は737-800に(21年6月27日)
写真特集・ANA 737-700退役
・「短い滑走路でも運航しやすかった」(21年6月28日)
ラストフライト
・ANAの737-700、16年で退役 ラストは岡山発羽田行き(21年6月27日)
JA05ANはフェリーアウト済み
・ANAの737-700、5号機が売却先へ 27日に全機退役、残り1機(21年6月29日)
・ANAの737-700、JA05AN退役 中部発羽田行きで、残り1機に(21年6月20日)
デカール貼付
・ANA、退役デカール貼った737-700運航開始 リボンはゴールド(21年5月11日)
・ANA、737-700に退役記念デカール貼付 最後の2機に(21年5月11日)
機材計画
・ANA、737-700退役へ 6月に全3機、中部で記念チャーターも(21年4月26日)
・ANA、機材を8%削減 22年度末は最大280機(21年5月2日)
世界初の737-700ER
・9年で退役、もう一つの“ANAビジネスジェット”737-700ER(21年4月10日)
特集・さよならANAビジネスジェット
前編 40席の贅沢仕様737-700ER(16年3月30日)
後編 窓付きトイレの贅沢仕様737-700ER(16年4月8日)
エア・ドゥ時代のJA01AN
・「すてきなたびを」写真特集・エア・ドゥ新塗装737-700(12年11月3日)