全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は6月29日、都内のグランドプリンスホテル新高輪で第76回株主総会を開いた。発行可能株式総数を倍増させる定款変更など3議案をすべて可決して閉会した。来場した株主は、2004年開催の第59回からでは最少の447人で、前回から138人減少。所要時間は1時間29分で前回に次ぐ短さとなり、退場者はゼロだった。
ANAHDの片野坂真哉社長は、下期以降は旅客需要が回復するとして「今年度末に国内線はコロナ前の水準、国際線は5割まで回復を見込んでいる」と説明。「出張や旅行の考え方が変わるだろう」として、FSC(フルサービス航空会社)のANA、LCC(低コスト航空会社)のピーチ・アビエーション(APJ/MM)、エアージャパン(AJX/NQ)を母体として2022年度後半から2023年度前半就航を目指す「第3ブランド」の中距離国際線LCCで、各社の特性を生かした航空事業を展開する。
グループ経営戦略を担当する芝田浩二専務は、「国際線市場は量と質に変化が生じ、アジア・オセアニア地域の回復が早く、業務渡航よりプレジャーの回復が早いだろう」と「第3ブランド」を設立する意義を述べた。
機材計画については、「293機を12機減らし、フリートを絞って乗り切る」(芝田専務)とし、今期はボーイング777型機など5機種32機を退役させ、正式な受領を延期しているエアバスA380型機の3号機など20機を受領することで、需要回復までは運航規模を抑える。
投資についてグループ財務統括責任者の福澤一郎専務は、「基本的に営業キャッシュフローの範囲」とし、航空機導入については「需要動向の変化に合わせてメーカーと交渉している」と述べた。
また、航空業界では世界的なテーマとなっているCO2(二酸化炭素)排出量は、2050年に実質ゼロとする目標を掲げた。ANAグループは従来、2050年までに航空機の運航で発生するCO2排出量を、2005年比で50%削減するとしていた。中間の目標として、2030年に2019年度の排出量実績を実質下回るレベルを目指す。実現に向け、従来はバイオ燃料などと呼ばれていた「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」の活用や、航空機の技術革新、オペレーションの改善、排出権取引制度の活用を挙げた。
質疑応答後の議案採決では、発行可能株式総数を倍増させて10億2000万株とする定款変更、取締役10人の選任、監査役1人の選任を原案通り可決した。新任役員は2人で、取締役にグループIT・グループ人財戦略・グループD&I推進担当の満倉達彦専務が、常勤監査役に三浦明彦氏が選任された。
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